2018年4月に宅地建物取引業が改正され、中古住宅のインスペクション内容について説明することが義務付けされました。
2020年4月には民法も改正し、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変わったことで、ホームインスペクションを意識する人も増えてきています。
しかしホームインスペクションが広がってきたのはつい最近のことなので、まだ理解している人は少ないように感じます。
そこで今回はホームインスペクションについて解説していきたいと思います。
目次
ホームインスペクションとは?
ホームインスペクションとは、住宅に詳しく一定の資格を有するホームインスペクター(住宅診断士)が住宅診断をすることです。
利害関係のない第三者が、住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき箇所についてアドバイスを行うもので、住宅診断や建物検査ともいわれています。
ホームインスペクションといえば中古住宅をイメージする方が多いと思いますが、新築住宅でもホームインスペクションは行われています。
しかし新築住宅と違い、中古住宅の取引はほとんどが個人間売買のため「保証が付与されない」という点を考えると、中古住宅の方がホームインスペクションの需要は高いといえます。
ホームインスペクションが必要とされている理由
ホームインスペクションが注目されている背景には、「中古住宅の流通性向上による空き家対策」や「中古住宅の資産性向上」があるといわれています。
日本では中古住宅の流通性がとても低く、不動産ジャパンのデータによると2013年度時点では不動産流通全体に占める中古住宅の取引割合は日本が14.7%で、アメリカの90.3%と比べると流通性の低さが分かります。
空き家の増加も社会的に問題視されていて、総務省の発表によると空き家率は平成30年時点で13.6%、846万戸が空き家の状態とされています。
2045年には空き家率が30%を超えるともいわれているため、空き家の増加をストップさせる狙いがあります。
又、住宅の平均寿命も日本が約30年なのに対し、アメリカ60年、ドイツ80年、イギリス100年と、先進国の中でかなり短くなっています。
この原因にはいくつか考えられますが、住宅メンテナンスに対する意識が低く住宅の状態が悪くなりやすいことも原因の一つでしょう。
メンテナンスがされないことにより流通性が低下
メンテナンスがされず住宅の状態が悪くなる ⇒ 中古住宅の流通性が悪くなる ⇒ 中古住宅を建て壊して新しい建物を建てる
これが今までの日本の不動産流通の流れでしたが、この流れを変えるためにホームインスペクションが普及し始めたと考えられます。
ホームインスペクションはした方が良いのか?
中古住宅の購入を検討している場合、ホームインスペクションをするかしないかで迷う方も多いと思います。基本的には、ホームインスペクションは実施した方が良いと思いますが注意点もあります。
それは、何かしら不具合があることを前提に、どこを直せば良いかを知るために診断することです。築年数がそれなり経っている中古住宅には、ほとんどの場合で建物の傾きや建物の損傷が見られます。
日本は地震や台風が多いうえに湿気が高く、住宅が傷みやすい環境にあります。欧米諸国の住宅平均寿命が世界と比べて短い原因の一つだと思いますが、大手ハウスメーカーで高額な費用を支払って建てられた建物でも傷んでいる場合がほとんどです。
よほどの築浅住宅なら別ですが、例えば築年数が30年以上経過しているような中古住宅の場合は相応の覚悟はしておいた方が良いでしょう。
ホームインスペクションの結果に関わらず、建物の状況を把握することは今後の修繕計画を立てることに役立ちます。そういった意味合いからも、ホームインスペクションを実施した方が良いと思います。
又、せっかくホームインスペクションをするのであれば「既存住宅瑕疵保険」の加入を検討することをオススメします。
既存瑕疵住宅瑕疵保険に加入することで、以下のようなメリットがあります。
既存住宅瑕疵保険加入のメリット
- 物件引き渡しから2年または5年の保険が付けられる(保険金額は500万円または1000万円)
- 築20年超(耐火建築物は築25年超)の中古住宅でも住宅ローン減税・登録免許税の減税を受けられる
- 1981年12月31日以前に新築された中古住宅でも不動産取得税の減税を受けられる
既存住宅瑕疵保険に加入できるかはホームインスペクションの結果によりますが、大きなメリットがあるのでできるなら加入するようにしましょう。
購入前にホームインスペクションを実施するには現所有者の承諾が必要になり、承諾が得られない場合にはホームインスペクションを実施できません。
自分の大切な不動産の粗探しをされるような気持ちになってしまい、ホームインスペクションに反対する売主様もたくさんいらっしゃいます。
ホームインスペクションの承諾を依頼するときは、窓口になっている不動産会社と良く話してから行うようにしましょう。
診断内容・費用の相場をご紹介
ホームインスペクションの診断内容
ホームインスペクションの主な診断項目について紹介します。
診断箇所 | 具体例 |
床下 | 基礎のひび割れ、コンクリートの剥離、断熱材の設置状況、給排水管からの漏水、シロアリ被害の有無 |
屋根裏 | 木部のひび割れ、金物の固定状況、断熱材の設置状況 |
外装 | 外壁のひび割れ、塗料の剥離や浮き、シーリング材の破断、屋根の割れや欠損、バルコニー床の沈み、 |
室内 | 建具のがたつき、床の傾き、床材のひび割れ、カビや異常な湿気、サッシの動作 |
水回り | 浴室・トイレ・洗面室の動作、床の傾き、床鳴り、壁材の欠損・割れ |
その他 | 給排水設備・電気設備・ガス設備の動作、設置状況や固定状況 |
一般的な診断項目を紹介しましたが、どの程度診断してくれるかは、会社やプランによって異なります。ホームインスペクションを依頼する前に、診断項目をしっかり確認しておきましょう。
住宅診断は誰が行なうのか?
ホームインスペクションは多くの場合、住宅診断を専門にしたプロが行います。しかし住宅診断を行うのに特定の免許が必要ではないため、診断を依頼する際には注意が必要です。
ホームインスペクションは「建築士」の国家資格を保有している人が行う場合と、「ホームインスペクター」という民間資格を保有している人が行う場合に大別できます。
一般的には建築のプロである建築士に依頼した方が良いとも言われていますが、建築士に求められるスキルとホームインスペクションに求められるスキルは違うので、一概にどちらが良いとは言い切れません。
これまでの実績や責任感、ホームインスペクションに対する想いなどで判断することが大切だと思います。
ホームインスペクションの費用相場
ホームインスペクションの費用は、木造住宅では5万円~6万円くらいが相場ですが、建物の構造や大きさ、診断項目によって違いがあります。
専門機材を使用してより詳細な診断を行う場合は、10万円以上になることもあります。ホームインスペクションにかかる時間はだいたい2時間~3時間くらいが目安です。
最後に
ホームインスペクションをしたからといって建物の状態がよくなる訳でもありませんし、「いやこんなの業者に頼まなくても分かる…」と思ってしまう可能性もあります。
「同じ築年数の住宅と比較して良いか悪いか知りたい」と思ってホームインスペクションを依頼しても、業者はそのような質問には基本的に回答してくれません。
築年数が経過した建物はほとんどの場合で不具合や傾きが発見されるため、単純に不安だけが募る可能性も考えられるでしょう。
そのあたりを考慮したうえで、ホームインスペクションを依頼するか判断することが重要です。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。