屋根は普段あまり見ることがないため、「外観にもさほど影響がないし適当に決めてしまおう…」と思ってしまいがちですが、屋根は常に太陽光や雨風を受けているため、建物を守る上でとても重要な役割を持っています。
そのため、新築やリフォームで屋根材を選ぶ際は、地域や予算に応じて、ご自身に合った屋根材を選ぶ必要があります。しかし、初めて屋根材を選ぶ方にとっては、「どんな屋根材があるの?」「それぞれの屋根材で何が違うの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか?
最近では多くの屋根材がラインナップされており、それぞれに特徴や違いがあります。この記事では、屋根材の種類や特徴を解説していきます。
目次
そもそも屋根材とは?屋根材の基礎知識をご紹介
屋根材の種類や特徴をお伝えする前に、まずは屋根材はそもそもどんなものなのか?どんな役割を持っているのか?といった、屋根材の基礎知識についてお伝えいたします。
冒頭でもお伝えしたように、屋根材は建物を太陽光や雨風から守る上でとても重要な役割を持っているため、屋根材の基礎知識をしっかり理解しておきましょう。
屋根材の役割
それではまず、屋根材の役割についてご紹介します。屋根材の役割としては以下の2つが挙げられます。
雨漏りを防止する
屋根材の役割の中で最も大きなものが雨漏りを防止することです。屋根材が十分に機能していないと、天井から雨水が侵入し生活に支障をきたすだけでなく、水分によって建物の構造物である金属や木材を腐食し、建物の劣化を早めてしまいます。
建物内部でカビを繁殖させることにも繋がるため、健康被害の面でも悪影響を及ぼします。建物の劣化を防止し、快適で安心してマイホームに住み続けるためには、雨漏りを防止することが重要です。
太陽熱を遮断する
夏場の外気温は連日30℃を超えますが、屋根材の表面温度は太陽光が直接当たることによって70℃を超えるとも言われています。屋根材によって太陽熱を遮断しなければ、太陽熱が室内に入り込んでしまうことで室内気温はどんどん上昇してしまいます。
室内気温が上昇することでエアコンの稼働率を上げることに繋がり、夏場の光熱費が余分にかかってしまうことにも繋がります。夏場でも室内を快適に保ち光熱費を節約するためには、屋根材でしっかりと太陽熱を遮断する必要があります。
屋根材に求められるもの
屋根材が雨漏りを防止し、太陽熱を遮断し続けるためにはどのようなものが求められるのでしょうか?屋根材に求められるものとしては以下の4つが挙げられます。
防水性が高いこと
防水性が低いと水が屋根材を通過し、建物内部に水の侵入を許してしまうことになります。防水性が高いことで、屋根材がしっかりと水をはじき水の侵入を防止するため、屋根材には高い防水性能が求められます。
日本で建てられている戸建て住宅の多くが木造ですが、木材にとって水は天敵です。水分によって木材が腐敗し、建物の劣化を早めてしまいます。鉄骨造の場合でも、水分によって鉄が腐食してしまうため、防水性の高い屋根材を選ぶことはとても重要です。
断熱性が高いこと
断熱性が低いと太陽熱が室内気温に影響し、夏場は暑くて過ごしにくくなってしまいます。断熱性が高いことで、屋根材が太陽熱をしっかり遮断して外気温に室内気温が影響されにくくなり、快適な住生活を過ごすことに繋がります。
最近では住宅業界全体が、住宅の気密性や断熱性を高める傾向にありますが、これは気密性と断熱性が高くなることで外気温に影響されない室内を作り、それがガス代や電気代を節約することにも繋がるからです。快適で家計にも優しい省エネ住宅を目指すのなら、断熱性の高い屋根材を選ぶことが重要だといえるでしょう。
軽量であること
屋根材は住宅の耐震性にも影響を与えます。屋根材の重量が重たいとお家の重心が下に下がり、地震発生時に建物が揺れやすくなることで建物にかかる負荷が大きくなり、建物が倒壊してしまうリスクを高めてしまいます。
屋根材が軽量になると建物の重心が上に上がるため、地震が発生しても揺れにくい建物をつくることができます。日本は地震大国と言われていることから、耐震性を重視する方も多いでしょう。耐震性を意識する場合は、なるべく軽量の屋根材を選ぶようにしましょう。
耐久性が高いこと
どれだけ性能の高い屋根材であったとしても、耐久性が低くてすぐに壊れてしまうような屋根材では、屋根材の交換頻度が多くなってしまい、メンテナンスに多大な費用を費やすことになってしまいます。
屋根材は重要な役割を持っているとはいえ、なるべく多くのメンテナンス費用をかけたくないと思う方も多いはずです。屋根材の交換頻度を少なくし、メンテナンス費用を節約するためにも、なるべく耐久性の高い屋根材を選ぶのも重要なことだといえます。
11種類の屋根材の特徴、メリット・デメリットを徹底比較
屋根には主に、陶器瓦・セメント瓦・スレート瓦・金属系の4つに分けられ、それぞれにいくつかの種類が用意されています。
細かく分けると11種類の屋根材が存在しており、それぞれに特徴やメリット、デメリットがあるため、ここからはそのあたりについて解説していきます。
和瓦・洋瓦
瓦は、日本の住宅では昔から使われている屋根材で、粘土を焼いて作られます。ほかの屋根材と比べて厚みがあるため、耐久性が高く、遮音性や断熱性、耐熱性に優れていますが、重みがあるため耐震性に配慮する必要があります。
以前はほとんどの住宅で使われていた屋根材ですが、最近では価格面や重量面から使用される頻度が少なくなってきています。
価格目安 | 8,000円~12,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約50年~100年 |
メンテナンス頻度 | 塗装不要 |
メリット |
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デメリット |
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セメント瓦(コンクリート瓦)
セメントに砂や水を加えて成型した瓦のことです。施工性が高く、陶器瓦のように焼きムラなどによる品質のバラつきが少ないのが特徴です。
ただし、セメントは吸水性が高いため塗装によるメンテナンスがこまめに必要になる点や、重量が重く耐震性が低下することから、最近ではあまり使用されていません。
価格目安 | 6,000円~8,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約30年~40年 |
メンテナンス頻度 | 約15年サイクルで塗装 |
メリット |
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デメリット |
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スレート(コロニアル・カラーベスト)
スレートはセメントに繊維質の材料を織り交ぜ、薄く成型した屋根材です。スレート、カラーベスト、コロニアルといった様々な名称で呼ばれますが、いずれも同じものを指しています。
価格が安く施工性が高いことから、最近では多く使われており、デザインやカラーも豊富にラインナップされています。非常に薄いため軽量であり、建物に耐震性を持たせやすいのも選ばれている理由だといえます。
価格目安 | 4,500円~8,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約25年~30年 |
メンテナンス頻度 | 約10年サイクルで塗装 |
メリット |
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デメリット |
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天然スレート
天然スレートは天然石である粘板岩を加工して仕上げた屋根材です。天然の岩石を利用しているため耐用年数が強く、塗装によるメンテナンスが必要ありません。
天然石の質感によって高級感を演出できますが、重量があり耐震性を持たせるのに工夫が必要である点や、施工可能な業者が限定され、施工費用も高額になりやすい傾向にあります。
価格目安 | 10,000円~30,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約30年 |
メンテナンス頻度 | 塗装不要 |
メリット |
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デメリット |
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金属屋根・トタン
トタンは亜鉛メッキ鋼板のことで、日本の住宅で昔から使われてきました。安価で軽量なため以前は主流の屋根材でしたが、耐久性が弱く錆びやすいため最近ではほとんど使われなくなりました。
断熱性が低いため室内の温度が外気温に影響されやすいとともに、防音性も低いため雨の音が響きやすいというデメリットがあります。又、色落ちしやすいため、家が安っぽく見えてしまうという特徴もあります。
価格目安 | 5,000円~6,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約15年~20年 |
メンテナンス頻度 | 約7年サイクルで塗装 |
メリット |
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デメリット |
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ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、アルミニウム・亜鉛・シリコンを混ぜ合わせた合金に、メッキ加工を施した鋼板のことをいいます。金属屋根の定番だったトタンの弱点である「錆びやすい」というデメリットを解消しており、現在では多くの場面でガルバリウム鋼板が使用されています。
アルミニウムが多く含まれているため、耐食性や耐熱性、防火性に優れているとともに、軽量で耐震性に優れ、コストパフォーマンスにも優れています。金属のためキズや凹みが付きやすく、遮音性は比較的低くなっています。
価格目安 | 6,000円~9,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約30年~40年 |
メンテナンス頻度 | 約15年サイクルで塗装 |
メリット |
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デメリット |
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アスファルトシングル
アスファルトシングルは、ガラス繊維であるグラスファイバーにアスファルトを塗布し、表面に細かな石粒や砂を施し、アクリル樹脂で固めた屋根材のことをいいます。
欧米諸国では昔から多く使用されていたものですが、ここ10年程で日本でも頻繁に使われるようになってきました。軽量で耐震性が高く、耐久性や耐食性に優れているとともに、様々な形状のものがあるためデザイン性が高いのが特徴です。
価格目安 | 6,000円~8,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約25年~30年 |
メンテナンス頻度 | 10年サイクルで塗装 |
メリット |
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デメリット |
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銅板
銅板は銅製の板を屋根に張り付けたもので、寺社仏閣や日本家屋で用いられてきた伝統的な屋根材です。年月の経過に伴って色が変わり、新築時は10円玉のような色ですが、次第に緑色に変色していきます。
銅板は厚みによって耐久性が異なり、一般的には0.4mm厚以上の銅板が使用されます。メンテナンスが不要で耐久性も高いですが、断熱性や防音性が低いうえに施工費用も高いため、一般住宅ではほとんど使用されることはありません。
価格目安 | 18,000円~20,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 60年以上 |
メンテナンス頻度 | 塗装不要 |
メリット |
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デメリット |
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ステンレス
ステンレスは錆びにくい材質のため、空気中に含む塩分濃度が高い海岸近くに住宅を建てる場合によく使用される屋根材です。経年劣化によって表面の塗装が色褪せることはありますが、材質自体が錆びにくいため、外観をあまり気にしない人であれば、塗装によるメンテナンスは必要ありません。
耐久性と耐火性に優れ、軽量で耐震性を持たせやすい材質ではありますが、防音性や断熱性が低いため屋根材以外での施工が必要になる点や、材料費が高く施工にも手間がかかるので施工費が高くなるという特徴があります。
価格目安 | 10,000円~14,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約50年 |
メンテナンス頻度 | 15年サイクルで塗装(美観目的) |
メリット |
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デメリット |
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ジンカリウム鋼板(自然石粒付ガルバリウム)
ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板の表面に細かな自然石粒を吹き付けたものです。紫外線で劣化しにくい鉱物の粒を吹き付けることで、劣化を防ぎ耐久性を向上させています。
ガルバリウム鋼板の表面に石粒の層を設けることで、断熱性や防音性の低さを克服しています。表面が石粒のため塗装が不要でメンテナンス性にも優れていますが、材料費が高く全体的な工事費用は少し高くなります。
価格目安 | 8,000円~12,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約40年~50年 |
メンテナンス頻度 | 塗装不要 |
メリット |
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デメリット |
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陶板
陶板は陶器瓦の耐久性や高級感はそのままに、軽量化を実現した比較的新しい屋根材です。有名な陶板屋根材は、株式会社鶴弥が販売している「スーパートライ美軽」が有名です。
新しい屋根材のため材料費が高く、施工できる業者も限られますが、陶器瓦の良い性能は残し軽量化を実現していることから、「陶器の屋根材を選びたいけど、耐震性が心配…」という方にはおススメの屋根材といえます。
価格目安 | 23,000円~30,000円/㎡(材工) |
耐久性目安 | 約50年以上 |
メンテナンス頻度 | 塗装不要 |
メリット |
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デメリット |
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まとめ:屋根材は価格・デザイン・性能を考慮して選ぶ!
この記事では、屋根材の基礎知識をはじめ、いくつも存在する屋根材の種類の特徴やメリット、デメリットをご紹介いたしました。
屋根材を選ぶ上で大事なことは、「自分たちの予算に合っているか?」「自分たちの好きなデザインか?」「求める性能は備わっているか?」を考え、総合的に判断していくことです。
又、住宅は屋根材だけを基準に考えるものではありません。仮にどうしても重たい屋根材を選びたいときは、筋交いの量を増やしたり、構造を検討することで屋根材の弱点を補うことが可能です。
とはいえ、総合的に判断するためには相応の知識が求められるため、初めて住宅を建てる方やリフォームをする方にとっては少し敷居が高く感じることもあるでしょう。
もし大阪府や兵庫県で屋根材選びにお困りの際は、当社スタッフが親身になって対応いたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。