不動産を探していると、物件資料の備考欄に「瑕疵担保責任免責」という文言を見たことがある人も多いと思います。
むずかしい言葉なので、意味が分からないままスルーしている人も多いかもしれませんが、瑕疵担保責任は不動産取引においてとても重要なことです。
新築住宅、中古住宅にかかわらず、不動産取引が完了して引渡しを受けたあとに、雨漏りや主要構造部などの不具合が見つかり、生活に支障をきたす可能性はゼロではありません。
瑕疵担保責任とは、このような”隠れた瑕疵”が見つかった場合に関係するとても重要なことのため、しっかり理解しておきましょう。
本記事では「瑕疵担保責任」について説明していきます。
目次
不動産の瑕疵担保責任とは?
瑕疵(かし)とは、キズ、不具合、故障、欠陥などのことをいいます。
不動産取引では、購入後のトラブル防止のために不動産売買契約時に、取引をする不動産に”瑕疵”がないかを事前に告知する義務があります。
雨漏りやシロアリの被害がある場合や、柱や梁、基礎などの主要構造部の損壊。過去の事件の有無などを売主はきちんと買主に伝えないといけません。
しかし、売主もすべての”瑕疵”を把握できていない場合があり、不動産に「隠れた瑕疵」が存在している可能性もあります。
瑕疵担保責任とは、そのような”隠れた瑕疵”について「売主がどこまで責任を負うか?」ということをあらかじめ決めておくものです。
ちなみに、瑕疵担保責任はあくまで「隠れた瑕疵」について適用されるもので、「知っていたのに告知しなかった瑕疵」については適用されません。
その場合は「告知義務違反」という扱いになり、瑕疵担保責任の内容にかかわらず契約解除や損害賠償の請求の対象となります。
どのような瑕疵が考えられるか?
一般的にイメージしやすい”瑕疵”としては、設備や建物の不具合などが考えられますが、それ以外にさまざまな”瑕疵”が存在しています。
瑕疵の種類をしっかり把握し、事前に告知しておくことは不動産取引後のトラブル防止に役立ちます。そのためにも、どのような瑕疵があるのか知っておきましょう。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、物理的な不具合や欠陥がある場合をいいます。具体的には、建物の傾きや柱、梁、基礎など主要構造部の損壊、シロアリ被害や床下浸水による木部の腐食などが挙げられます。
土地の場合だと、地盤沈下や土壌汚染、境界が不鮮明、越境物の有無などがあります。キッチンやトイレなどの住宅設備と違い、これらの部分は普段目にする機会が少ないため気付きにくいという性質があります。
物件の引渡しが完了してからしばらく経った後、何かのきっかけで発覚するというケースも少なくありません。
法律的瑕疵
不動産には建築基準法や都市計画法などの法律が関わっており、これらの法律によって様々な制限を受けています。
用途地域によって建物の用途が制限されたり、斜線制限によって建物の高さが制限されたりします。
接道義務を満たしていない場合など、法律によって「不動産の価値」そのものに大きな影響を与える内容も多くあります。
心理的瑕疵
対象となる不動産で過去に事件や事故があり、一般的に嫌悪感を抱く場合は”心理的瑕疵”となります。
具体的には、建物内で自殺や殺人事件があったり、火災が発生して建物が全焼したり、孤独死でしばらくの間放置されていた場合などが考えられます。
ちなみに、どの程度まで心理的瑕疵として告知義務があるのか?について明確な定めはありません。
事件事故が発生してから5年~6年くらい経った場合や、死後すぐに発見された場合は心理的瑕疵に該当しないという見解が多いです。
環境的瑕疵
周辺にカルト宗教施設やゴミ処理場、暴力団事務所などの施設がある場合、環境的瑕疵に該当します。
これらのほかに、騒音や臭気を発する工場などが近隣にある場合も環境的瑕疵となります。
近くに線路が通っていて電車の走行音がうるさかったり、空港が近くにあって飛行機の音が聞こえる場合も環境的瑕疵として告知しておいた方が良いでしょう。
瑕疵担保責任の期間はどのくらい?
瑕疵担保責任とはどのようなものなのか?についてお伝えしました。次に、瑕疵担保責任が適用される期間についてご紹介していきたいと思います。
瑕疵担保責任は、「物件の種類」「売主が業者が個人か」によって適用されるルールが異なるため、そのあたりについて見ていきましょう。
新築住宅
新築住宅は個人では販売することができないため、売主は必ず不動産会社やハウスメーカーなどの住宅事業者となります。
新築住宅を販売する事業者には「住宅品質確保法」が適用されることになり、瑕疵担保責任の期間を「引き渡しから10年間」とするよう義務付けられています。
この場合に瑕疵担保責任が適用される範囲は、柱や梁、基礎などの建物の基本構造部に対してです。
【建物の基本構造部】
引用:住宅保証機構のパンフレットより抜粋
基本構造部以外の住宅設備や建具については、住宅事業者や住設メーカーが設定した保証が適用されることになります。(当社の保証制度はこちらをご参照ください)
又、瑕疵担保責任は住宅を提供した住宅事業者が負うことになりますが、10年間の間に住宅事業者が倒産している可能性も考えられます。
その場合のリスクに備えて、新築住宅を提供する住宅事業者は「住宅瑕疵担保責任保険」に加入することが義務付けられています。
土地・中古住宅
中古住宅や土地の瑕疵担保責任の期間は、売主が”不動産会社”か”個人”かによって異なります。
不動産会社が売主となる場合には、瑕疵担保責任の期間を「引き渡しから2年以上」設けることが宅建業法で義務付けられています。
中古住宅の場合は、瑕疵担保責任が適用される範囲は新築戸建同様、柱や梁、基礎などの建物の基本構造部に対してとなります。
「土地に瑕疵なんてあるの?」と思うかもしれませんが、土地の中から大きな残存物が発見されたり、土壌汚染などにより建築予算に大きな誤差が生じる可能性も考えられます。
個人が売主となる場合には、売主と買主の間で瑕疵担保責任の期間を決めることになります。
売主とはいえ、一般人は不動産に関しての知識に乏しいため、瑕疵担保責任を負うことを嫌がる傾向にあります。
そのため瑕疵担保責任を負わない”瑕疵担保責任免責”という形で売買契約を締結するケースも多いです。
特に相続での売却のように、売主が住んでいなかった不動産の売却は、ほとんどのケースで瑕疵担保責任免責での売買契約となります。
瑕疵担保責任を負う場合も、1ヶ月~3ヶ月と比較的短期間で設定するのが多いです。
瑕疵担保責任の範囲も、キッチン周りや給湯器などの一部に限定するなど、売主と買主の間で自由に決めることができます。
買主としては瑕疵担保責任を売主に負担して欲しいと考えますし、売主としては瑕疵担保責任は負いたくないと考えるものです。
引き渡し後のトラブルを防止するためにも、事前にしっかりと話し合いをしておくことが重要だと思います。
まとめ
「きちんと内見もして不具合もなさそうだし、特に問題ないだろう…」と思って瑕疵担保責任を安易に考える人も多いと思います。
しかし、瑕疵担保責任は引き渡し後の不具合に対する負担をどちらが負うかを決める、とても重要なことです。
売買契約を締結する前に、「瑕疵担保責任はどんな内容になっているかな?」と意識をして、慎重に話を進めるようにしましょう。
又、さきほどもお伝えしたように、個人が売主の物件は瑕疵担保責任免責での売買契約が多くなります。
そのため、購入前の建物や土地のチェックを怠らず、なるべく契約前に瑕疵を把握する努力を行うことが大切です。