アスベストとは一体どのようなものなのか?ニュースなどで興味を持った人も多いのではないでしょうか?令和2年6月には大気汚染防止法が改正され、石綿(アスベスト)飛散防止対策の強化が2年以内に義務化されます。
この法改正により原則としてすべての建物について、解体や改修前に専門業者が石綿の有無を調べる必要が出てきます。
アスベストは別名では石綿ともいいます。不動産取引を行う際の重要事項説明書には、石綿調査の有無や調査結果を記載することが義務付けられています。
本記事では人体に悪影響を与えるともいわれている、アスベスト(石綿)について紹介していきます。
目次
アスベストとは?
中古住宅の購入を検討するときには、「お家に住んだ後に健康被害が出ないか?」というのも気になるところです。
昔は使ってもよかった建築材料の中には、「人体に害がある」という理由で現在は使用を禁止されているものも多数あり、その中でも有名なものに「アスベスト(石綿)」があります。
アスベストとはどんなものなのかを一緒に見ていきましょう。
アスベストの使用用途
アスベストは安価で耐火性があり、断熱性、防音性、絶縁性等に優れていることから、生活のあらゆる場面で使われてきました。
1970年から90年にかけて年間30万トンものアスベストが輸入されており、その内の約8割が建築用に使用されたと言われています。
建築材料としては主に耐火・断熱・防音を目的にビル、学校、工場、一般住宅など様々な建物に使用されていました。
アスベストには防湿・防カビにも優れていることから、鉄骨構造の柱や梁に多く使用されています。
アスベストを吸い込むとどうなる?
アスベストが人体に与える影響としては、石綿肺・肺ガン・悪性中皮腫などを発症するリスクが高くなります。
アスベストを吸い込んでもすぐ症状が出るわけではなく、20年~40年の長い潜伏期間を経て発症する場合があるといわれています。
このような症状が出ている人の多くがアスベストを取り扱う職業に従事しており、長期間にわたりアスベストを吸い込んだことが原因と考えられています。
又、アスベストは普段から飛散しているわけではなく、建築時や建物の解体時に飛散するという特徴があります。
しかし経年劣化により飛散しやすくなるので、室内の壁や天井にアスベストが吹き付けられている場合には注意しましょう。
アスベストはいつ使われていた?
アスベストは2006年(平成18年)9月1日より製造、輸入、使用などが原則禁止されました。
アスベストの使用に関しては段階的に使用が制限されてきており、石綿製品製造の業界団体「一般社団法人JATI協会」によると、このような流れになっています。
アスベスト使用制限の歴史
- 1975年(昭和50年)10月1日:
石綿含有率が重量の5%を超える吹き付け作業の禁止 - 1995年(平成7年)4月1日:
石綿含有率が重量の1%を超える吹き付け作業の禁止 - 2004年(平成16年)10月1日:
石綿含有率が重量の1%を超える石綿製品の製造、輸入、使用などが禁止 - 2006年(平成18年)9月1日:
石綿含有率が重量の0.1%を超える石綿製品の製造、輸入、使用などが禁止
このように、アスベストに対する規制は段階的に厳しくなってきています。
1995年(平成7年)4月1日に含有率の基準が引き上げられるまでは、ある程度の量が使用されていたと判断できます。
アスベストは建物解体時に散乱することが多いため、1995年4月1日以前に建てられた建物の解体時には注意が必要です。
アスベストが使われているかの見分け方
アスベストがどのようなものなのか説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
アスベストについて理解できたら、自分が買おうとしている物件にアスベストが使われていないか気になる方も多いでしょう。
ここからは、どのようにアスベスト使用の有無を調べれば良いのかご紹介したいと思います。
建築時の設計図書で確認する
建築当時の建築材料や工法が記載された設計図及び施工記録などを確認し、アスベストが使用されているか調べることができます。
設計図などの書類が見つからない場合は、建物を建てた建築会社に問い合わせてみましょう。
建築当時の書類がきちんと保管されている場合は、建築会社からアスベスト使用の有無を確認できます。
建築年月日から判断する
建築当時の情報を入手できなかった場合は、その建物が建てられた年月日から推測することができます。
アスベスト使用の有無の目安になる年月日
- 1975年(昭和50年)までに建てられた建物 :
吹き付けアスベストが使用されている可能性あり - 1980年(昭和55年)までに建てられた建物:
石綿含有吹き付けロックウール - 1988年(昭和63年)までに建てられた建物 :
その他石綿含有吹き付け材 - 1995年(平成7年)までに建てられた建物 :
含有率5%までのロックウールや吹き付け材
アスベストがよく使われていたのは上記の期間です。
この期間内に建てられた鉄骨造の建物には、アスベストが使われている可能性が高くなります。
専門業者に依頼する
アスベストはあらゆる場所に使用されていて、用途により3000種以上もの製品があると言われています。
アスベストは時間が経ち劣化してくると表面がワタ状となり、やわらかくなります。吹き付けアスベスト以外にも、アスベスト成形板などもあり、一般の方には目視での判断が難しいかもしれません。
自分でのアスベスト調査に限界を感じたら、専門の業者に依頼する方が安心だといえるでしょう。
まとめ
今回はアスベストについて紹介してきました。アスベストに関する法律は段階的に厳しくなってきていて、現在ではほぼ使われることはなくなってきました。
しかし現在取引がされている中古住宅の中にも、アスベストが使われている建物は多く残っています。
アスベストは日常的に飛散しているわけではなく、普段の生活ではさほど影響はないとの見方がされていますが、経年劣化によりアスベストが傷み飛散している可能性も十分に考えられます。
アスベストが使用されている可能性のある年代の物件を購入する場合は、せめて室内などの居住空間にアスベストが使われていないか調べておいた方が安心だといえるでしょう。