家づくりを考える際に、ベタ基礎や布基礎といった基礎の種類と同様に、基礎パッキンの種類について考える人も多いでしょう。
木造住宅を建てる場合には、木材の腐食を防止するために、床下の換気性が重要とされています。土壌面が露出している布基礎などでは、水蒸気発散や換気・通風不足によって起こる高湿化は、床下で使われている木材に致命的なダメージを与えてしまいます。
木材が腐食する問題点を改善するために、最近では床下全体を鉄筋コンクリートで覆うべタ基礎が採用された住宅が増えたり、全館空調システムによって床下全体の換気も行なえるようになってきました。
これら技術の進歩に伴い、基礎と土台の間に基礎パッキンを用いるようになり、いくつかの種類の基礎パッキンも販売されています。
そこで本記事では、基礎パッキンの種類や特徴、通気パッキンと気密パッキンの使い分け方などについて解説していきたいと思います。
目次
基礎パッキンとは?
基礎パッキンとは、基礎のコンクリート部分と土台の木部の間に入る硬い樹脂製のものをいいます。
基礎パッキンが普及する前は、基礎のコンクリート部分に幅40m×高さ20cm程度の床下換気口を各部屋一か所ずつ配置し、そこから通風・換気を行なっていましたが、この工法では部屋の角部分は換気が行なわれにくかったり、基礎に換気口の穴を開けるため、そこからひび割れを起こして基礎耐力が弱くなってしまうなどの問題点がありました。
基礎パッキンは床下全体を囲うように設置するため通気性が高く、基礎に穴を開ける必要もないため、基礎の強度も強く保つことができます。
(引用:フクビ化学工業パンフレットより抜粋)
又、従来のように基礎のコンクリート部分と土台の木材を直接繋げてしまうと、基礎コンクリートの水分が土台に浸透して木部を腐食させる原因となります。
木材の腐朽はシロアリが発生する原因にもなります。シロアリ被害によってさらに木部が傷み、住宅に致命的なダメージを与えることにもなりかねません。
基礎コンクリートと土台の間に基礎パッキンを挟むことで、常に通気が行なわれるようになり、土台の木部を常にドライな状態に保つことができ、住宅の耐久性を上げることができます。
(引用:フクビ化学工業パンフレットより抜粋)
基礎パッキンには、床下の通気・換気性を高め、木材の腐朽を抑制するとともに、基礎の強度を高めるというとても重要な働きがあります。
基礎パッキンの種類と特徴
基礎パッキンを使用した基礎パッキン工法は、1976年に大阪市城東区にある城東テクノ株式会社によって開発されました。
開発当初はそれほど多くの種類がありませんでしたが、開発から40年以上経過した今では、様々な種類の基礎パッキンが製造、販売されています。
ここからは、基礎パッキンの種類や特徴について紹介していきたいと思います。
キソパッキン(通気パッキン)
画像:城東テクノ株式会社HP
ベースモデルとも呼べる樹脂製の正方形をした基礎パッキンです。通気パッキンとも呼ばれるもので、メーカーによって定められた間隔ピッチで、基礎の上に並べて施工していきます。
城東テクノのキソパッキンは、樹脂のしなやかさと石の強さを兼ね備えた「Joto複合材(ポリオレフィン樹脂+炭酸カルシウム(石粉)」で作られており、経年劣化や荷重に対しての耐久性と安定性に優れています。
基礎の上の全面に基礎パッキンが並ぶ訳ではないので、基礎パッキンが置かれていないところは土台が宙に浮いた状態になります。
キソパッキンロング
画像:城東テクノ株式会社HP
先ほど紹介したキソパッキンをさらに改良したのがこの「キソパッキンロング」です。基礎の上の全面に基礎パッキンを並べるため、住宅の荷重を基礎全周で受けることができます。
基礎と土台の間にすき間が少ないため、床下にネズミなどの小動物が入るのを防ぐ「防鼠材」の設置が不要になります。
特殊構造の換気スリットによって、床下の湿気を効率良く排出できるように設計されています。キソパッキンと比べて一つ一つの部材が大きいですが、自由にカットできるため、長さ調整も簡単に行なうことができます。
気密パッキンロング
画像:城東テクノ株式会社HP
浴室の床下に外気が入ると、浴室全体が外気温の影響を受けやすくなり、冬などは寒くて快適な入浴ができなくなってしまいます。又、浴槽内の水温が下がりやすくなり、保温に光熱費が多くかかり省エネ性が下がってしまいます。
このように、浴室などのように気密化が必要な場所に使用するのがこちらの「気密パッキンロング」です。
名前のとおり高い気密性を有することから、床下換気が必要なところには使用できません。又、基礎断熱工法の場合には、外周に使用し、内周にはキソパッキンロングを使用することなどの注意点があります。
断熱気密パッキン(ロング)
画像:城東テクノ株式会社HP
気密パッキンロングに断熱材をプラスしたのが、この「断熱気密パッキン」です。浴室まわりなどのように、気密性だけでなく断熱性を求められる箇所に使用します。
気密性・断熱性に優れ、基礎コンクリートの結露を防止することができ、床下内にカビが発生するのを抑止する効果が期待できます。
気密パッキンと同様、床下換気が必要なところには使用できず、基礎断熱工法の場合には、外周に使用し、内周にはキソパッキンロングを使用することなどに注意が必要です。
基礎パッキンの使い分け方
基礎パッキンの種類と、それぞれの特徴についてご理解いただけたでしょうか?基礎パッキンは、使用する場所やシーンによって使い分ける必要があります。
どのような場面で、どの基礎パッキンの種類を選択するのか、主に3つのシーンを想定してご紹介したいと思います。
住宅の安定性をさらに高めるなら「キソパッキンロング」
間隔ピッチで敷き込むキソパッキンと比べて、キソパッキンロングは建物の全周に敷き込みます。そのため、住宅の安定性をさらに高める効果が期待できます。
一般的なキソパッキンはメーカー指定の間隔ピッチで設置しないといけませんが、キソパッキンロングは全周に敷き込むだけなので施工が簡単で、人的ミスが発生しにくいという特徴もあります。
キソパッキンロングは一つ一つの部材が高額な上に、使用する個数も多くなってしまうため、建築費用が高くなってしまいますが、住宅に高い安定性を求める場合には、キソパッキンロングを採用するのが良いといえます。
お風呂や玄関まわりは「気密パッキンロング」
木造住宅の場合、床下の木材を乾燥させておくために通気性が重要とされていますが、通気性が必要でない場所もあります。その代表的な場所が「お風呂」と「玄関まわり」です。
浴室の床下に外気が入ることで、浴室の気温が外気温の影響を受けることになり、冬は寒くて快適に入浴ができなくなってしまいます。浴槽の湯が冷めやすくなることから、省エネ性も低下してしまうでしょう。玄関まわりは、床下空間と室内空間が直接つながりやすく、床下から室内に汚れた空気やカビなどが侵入する可能性があります。
これらお風呂や玄関まわりなどのように、気密化が必要な場所には気密性の高い気密パッキンロングを採用する必要があります。
全館空調・床下エアコンを採用する場合は「断熱気密パッキン」
全館空調は、居室ごとに冷暖房を行なう個別空調と違い、家全体を冷暖房するので、家じゅうの温度を一定に近い状態で保つことができます。全館空調は床下の換気も全館空調システムで行なうことができるため、基礎パッキンには通気性が求められません。むしろ断熱性と気密性が求められることになります。
床下エアコンは、一般的には壁にかけるエアコンを床下に設置して、床下からエアコンの風を各居室に送り込む装置です。この場合も、床下に気密性がないとエアコンの空気が外に放出されてしまうため、家全体に冷暖房をかけることができなくなってしまうため、基礎パッキンには高い断熱性と気密性が求められます。
これらのように、床下空間も室内空間のひとつと考え、床下空間を外気から断熱して基礎をつくる工法を「基礎断熱工法」といいますが、基礎断熱工法を用いる場合には断熱気密パッキンを採用することになります。
まとめ
今回の記事では、基礎パッキンの種類や特徴などについて紹介しました。基礎は名前の通り「お家を支える基礎」ともいえるため、とても重要な部分です。後から工事を行なうことが困難な場合も多いため、計画段階で意識しておくことが大切です。
基礎パッキンの役割や特徴をしっかり理解し、ご自身が求める性能に合った基礎パッキンを選ぶようにしましょう。それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。