全館空調システムとは!メリット・デメリットや導入費用の目安をご紹介

2022年3月8日

全館空調システムとは!メリットとデメリットを知って、いるかいらないかを決めよう

近年、全館空調システムを提案するハウスメーカーが増えたことで、全館空調に関心を持っている方が増えているように思います。

「一年中、家のどこにいても快適に過ごせる」というフレーズに惹かれ、採用を検討している方も多いと思いますが、一方で「電気代がかかりそう」「デメリットも知っておきたい」といった心配の声も多く聞かれます。

そういった方に向けて、本記事では全館空調システムの基本的な仕組みや、全館空調システムを導入するメリット、デメリットについてご紹介いたします。

全館空調システムとは?

全館空調システムとは?

これまでの空調というと、家の各箇所にエアコンを設置し、それぞれのエアコンを稼働させることで空調を行うのが一般的でした。換気に関しても各部屋に設置された換気口や換気扇によって行われていました。

全館空調システムでは、それらの空調や換気をお家丸ごと一台の全館空調システムで行うことができます。従来のエアコンだと各エアコンごとに室外機を設置する必要がありますが、全館空調システムを導入することで室外機は一台ですむため、お家周りをスッキリさせることも可能です。

【全館空調システムのイメージ】

引用元:OMXホームページ

全館空調システムの仕組みはメーカー各社によって若干異なりますが、当社が推進している「OMX」では、屋根裏に設置されたシステム本体ユニットからパイプを通じて各部屋に行き渡り、各部屋に設けられた給気口から暖気(冷気)が供給されます。

こちらが実際にOMXが取り付けられた住宅の写真です。このような大きなシステム本体ユニットが屋根裏に設置され、本体ユニットからの空気がパイプを通じて各箇所に送りこまれ、給気口から供給される仕組みになっています。

給気口は各居室だけではなく、トイレや洗面所、廊下部分にも設置することができるため、「家のどこにいても快適な住宅」を作り出すことができるのが、全館空調システムの最大の特徴だといえます。

又、冷暖房中の室内では空気の入れ替えが必要になりますが、換気を行うことでせっかくの快適な温度が逃げてしまいます。そのような事態を避けるために、全熱交換換気という仕組みを採用し、吸気と温度の交換を行うことで、換気を行っても気温の変化が起こりにくいようになっています。

全館空調システムを導入するメリット

全館空調システムを導入するメリット

全館空調システムには従来のエアコンと比べてさまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるか順に紹介していきます。

メリット1.家中を均一の温度に保てる

全館空調システムを導入することで得られる最大のメリットは、いつでも家中が快適で均一の温度に近づけられるという点です。

冬の寒い季節に、リビングは暖房で暖かいけど、お手洗いや浴室に行くときに寒い経験をした人も多いと思いますが、全館空調システムを導入することでそんな悩みを解消することができます。

全館空調という名前のとおり、リビングやキッチンだけでなく、各居室、トイレ、洗面所、浴室までほぼ同じ気温に保つことができ、どこにいても快適に過ごせます。

快適に過ごせるだけでなく、ご高齢の方が寒い季節に起こしやすいヒートショックや暑い季節の熱中症の防止にも役立ちます。

ヒートショックとは、暖かい部屋から気温の低い洗面所や浴室に移動することで、急激な温度変化によって血圧が変化し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす現象のことです。

日本は世界トップクラスの高齢化社会のため、ご高齢の方のヒートショック、熱中症の発生件数が増え続けていますが、全館空調システムによってそれらの発生件数を減少させる効果が期待できます。

メリット2.室内や室外をスッキリさせられる

従来の壁掛けエアコンでは、各居室に大きなエアコンを設置するのが一般的ですが、全館空調システムでは各部屋にエアコンを設置する必要がないため、壁や天井がスッキリし、広々としたスタイリッシュな空間を演出することができます。

又、室外機も一台で済むため、「せっかくお洒落な外観にしたのに、室外機で台無し…」といった不満を抱くこともありません。

メリット3.常に空気をキレイに保てる

全館空調システムには、「第一種換気システム」という換気システムを採用しているケースがほとんどです。

住宅を新築する際には、24時間換気などの換気システムの導入が義務付けられていますが、そのほどんどが自然排気もしくは自然給気によって行われています。

第一種換気システムは、排気も給気も機械によって強制的に行われるため、自然排気(給気)と比べて効率的に排気と給気を行うことができ、常に清浄な空気環境を保つことができます。

清浄な空気環境を保つことは、シックハウス症候群やアレルギーなどから住んでいる人を守ることにつながります。

メリット4.間取りの自由度が広がる

各部屋にエアコンを設置する場合は、冷暖房効率を気にしなければいけないため、ドアや仕切りを設けるのが一般的です。全館空調システムなら、冷暖房効率を気にする必要がないため、大きな吹き抜けを設けたり、開放感のある大空間LDKを作ったりと、間取りの自由度を大幅に広げることができます。

最近では家族のつながりを深めるために、あえてドアや仕切りを配置しない間取りを希望するお客様も増えてきており、全館空調システムはそのようなニーズに応えるためには欠かせない空調システムだといえるでしょう。

全館空調システムのデメリット

全館空調システムのデメリット

全館空調システムのメリットをお伝えしましたがいかがだったでしょうか?

従来のエアコンと比べて多くのメリットがある全館空調システムですが、いくつかのデメリットも存在しています。

全館空調システムの導入を検討する際、メリットだけでなくデメリットについても理解し、導入するかどうかを判断するようにしましょう。

初期費用(導入費用)が必要になる

当然のことながら、全館空調システムを導入するための初期費用が必要になります。

従来のエアコンを導入する場合でも、4LDKのお家にエアコンを設置するためには、基本的にエアコンが5台必要になり、エアコン1台20万円と換算して総額100万円ほどがかかりますが、全館空調システムを導入する場合にはそれ以上の費用が必要になるケースがほとんどでしょう。

全館空調システムを導入するための費用はハウスメーカーや工務店によって大きく異なるため、導入にかかる正確な費用を確認したうえで検討することが重要です。

家自体の気密性や断熱性が不可欠

全館空調システムは、屋根裏に設置している本体ユニットから排出された暖気や冷気がパイプを通じて床下にいき、一階の各居室の床に設けられた給気口から排出されます。

そのため、床下環境の気密性や断熱性が低いと、せっかくの暖気や冷気が外に逃げてしまい、肝心の居住スペースまで暖気や冷気が行き届かなくなってしまいます。

全館空調システムの機能を最大限に活かすためには、家自体の気密性や断熱性を高める必要があり、そのために工事費用も高くなってしまうことが考えられます。

なお、全館空調システムを導入する場合には、一般的に基礎断熱工法が用いられています。基礎断熱工法については別記事で紹介していますので、こちらの記事をご参照ください。

基礎断熱の床断熱の違いとは!床下換気やシロアリ対策はしなくて良いの?
基礎断熱工法はシロアリに弱い?床下換気対策の必要性や床断熱との違いについて解説

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部屋ごとの温度調整がしにくい

各部屋に別々のエアコンが設置されている場合は、その部屋を使う人が好きに温度や風量を調整して使用することができますが、全館空調システムでは部屋ごとの温度調整ができない場合が少なくありません。

暑がりの人と寒がりの人とでは、快適に感じる温度は異なります。家族間でちょうど良い温度を大きく異なる場合には、導入前にしっかり検討した方が良いかもしれません。

急激な冷房・暖房が効きにくい

全館空調システムは、「家中どこにいても快適な温度」を作るのが得意な一方、真冬の帰宅時などに急に室温を上げるといったことが苦手です。

そのため、起床時間や帰宅時間の1時間~2時間前にタイマー機能を使って、部屋を暖めておくなどの工夫が必要になります。

故障すると家全体の冷暖房が使えなくなる

全館空調システムは1台で家じゅうの空調を行っているため、万が一本体ユニットが故障してしまうと、家全体の冷暖房が使えなくなってしまいます。

全館空調システムが従来のエアコンと比べて故障しやすいといったことはありませんが、万が一に備えて定期的に点検やメンテナンスをしっかりしておくことが重要です。

使い方によっては電気代が高くなる

全館空調システムを導入する場合、使用状況によっては電気代が高くなってしまう可能性があります。

家族がいつもリビングに集まっているご家庭であれば、従来のエアコンではリビングのエアコンを1台作動させるだけで済むため、家全体を暖める全館空調システムだと電気代が高くなってしまいます。

逆に、家族がいつも各居室にばらけていて数台のエアコンを常に作動させているご家庭であれば、全館空調システムでは1台のエアコンで済むため電気代が安くなることが考えられます。

ご自身のご家庭ではどのようなエアコンの使い方するかを考えたうえで、全館空調システムの導入を検討するようにしましょう。

太陽光発電と同時導入でデメリットを緩和できる

太陽光発電と同時導入でデメリットを緩和できる

先ほどは全館空調システムを導入する際のデメリットについてご紹介しました。その中でも、インターネット上で多く見受けられるのが「全館空調を導入したら電気代が高くなった…」という意見です。

確かに、全館空調は24時間家全体を空調することを前提にしているので、個別空調のようにエアコンのONOFFを繰り返して節電したりできませんし、1台あたりの電気出力が大きいため、個別空調のエアコン1台を動かすよりも多くの電力を消費します。そのため、個別空調と比べて電気代が大きく上がってしまう可能性があります。

そういったデメリットを緩和させるために、全館空調システムと同時に太陽光発電システムを導入する方法が有効です。当社が推進する「OMSolar OMX」では、太陽光発電システムによる発電だけでなく、太陽熱を利用した暖房を行うことでエネルギー効率を高め、さらなる省エネ化を可能にしています。

【太陽熱による暖房のイメージ】

引用元:OMXホームページ

OMXでは太陽熱を利用するため、一般的な「太陽光発電システム+全館空調システム」の組み合わせと比べて全館空調に費やす電力を抑えることができ、その分を夜間に使う電力として蓄電したり、さらに余った電力を売電することができます。

全館空調システムと同時に、太陽光発電システムと太陽熱を利用できる暖房システムを導入することで、全館空調システムの最大の弱点である「電気代が高くなった」というお悩みを解消できます。

ちなみに、「太陽光発電の仕組みや売電について詳しく知りたい」という方は、こちらの記事をご参考ください。

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気になる導入費用の目安はいくら?

ここまで全館空調システムについてご紹介してきましたが、最後に全館空調システムを導入するために必要な費用の目安をお伝えしておきたいと思います。

全館空調システムを導入するために必要な費用は施工するハウスメーカーや工務店によって異なりますが、おおよそ200万円~300万円が目安です。

又、この導入費用のほかに、メーカーによる定期点検やフィルター交換代として年間2万円~3万円程度のメンテナンス費用が必要になってきます。

全館空調システムと同時に太陽光発電システムを導入する場合の目安としては400万円~500万円ほどが必要になりますが、こちらもメーカーや工務店によって価格に幅があります。

全館空調システムを導入するデメリットでも挙げましたが、導入するためには相応の金額が必要となりますので、導入すべきかどうかをしっかり検討しましょう。

全館空調システムと太陽光発電システムを同時に導入する場合は、収支シミュレーションをメーカーや工務店に算出してもらい、「実際にコストパフォーマンスは良いか?」を調べたうえで導入を決めることが重要です。

なお、当社では「OMSolar OMX」の導入を検討しているお客様に対し、専用のソフトを使って事前に収支シミュレーションを見ていただき、実際に導入した場合に毎月どのくらいのお金が節約でき、どのくらい売電収入が得られるかを知ったうえで導入の判断をしていただくように徹底しています。

当社は、高気密・高断熱にこだわったREAL ZEH住宅の普及に励んでいます。全館空調の導入を検討している方はお気軽にご相談ください。