注文住宅でのマイホーム購入を検討する際「どんな建物を建てようかな?」という感じで、建物のことばかりを考えてしまいがちです。便利な設備やお洒落な内装のことを考えるのはとても楽しいことなので、建物のことばかりを考えてしまうのも無理はありません。
しかし、家を建てるためには当然のことながら土地が必要になります。そして、土地の購入に関する検討は建物のことを考える以上に重要なことだといえます。特に土地購入時の住宅ローンや土地選びの注意点について知識を深めておくことは大切です。
そこで、この記事では、土地の購入時の住宅ローン利用に関する知識を始め、土地購入時に住宅ローンを利用する流れや土地選びの注意点を解説いたします。
土地の購入時に住宅ローンは利用できる?
注文住宅で建物を建てる際、土地を所有していない場合には土地を購入する必要があります。土地を購入する際、住宅ローンを利用することはできるのでしょうか?
住宅ローンの利用の可否によって、そもそも土地を購入することができなくなる可能性もあるため、土地購入時の住宅ローンについて理解しておきましょう。
土地のみを購入する場合は住宅ローンは使えない
住宅ローンは土地だけを購入する場合には利用できません。というのも、住宅ローンは「住宅を買うためのローン」だからです。土地だけでは住宅とは言えず、目的外の用途に使われてしまう可能性が残ります。
仮に、住宅ローンで購入した土地に店舗や工場などを建てられたら目的外になってしまいますし、他者に貸すための住宅を建てても事業用になり、目的から外れてしまうことになります。
住宅ローンは、ローン契約者が住むために土地を購入する場合にのみ利用できるローンであり、事業用に土地を購入する場合には事業ローンなどで購入資金を借り入れる必要があります。
住宅ローンの大前提として、「将来的に住宅を建てるために土地を購入する必要がある」ということを覚えておきましょう。
土地購入時に利用できる住宅ローンの種類
先述したとおり、将来的に住宅を建てることを前提で土地を購入する場合には住宅ローンを利用することができます。土地購入時に利用できる住宅ローンは主に2種類あります。
一つが「土地先行融資」、もう一つが「つなぎ融資」です。ここからは、土地先行融資とつなぎ融資、それぞれの特徴について解説いたします。
土地先行融資
土地先行融資とは、土地を購入するために必要な資金を先行して受けられる融資のことをいいます。建物の建築に必要な資金は、建物が完成し、引き渡しを受ける際に融資が実行されます。
住宅ローンを土地+建物の2本立てになり、土地の購入資金の融資が実行された時点で土地部分の返済が開始されるため、現在の家賃と土地住宅ローンの返済を2重で支払うことになります。
金融機関によって審査時の必要書類は異なりますが、一般的には審査時にどのような建物を建てるかが分かる建物図面や正式な見積書が必要です。
又、マイホームの建築を依頼する工務店やハウスメーカーによっては、工事の着工金や中間金を求められるのが一般的ですが、土地先行融資では、建物の完成時に建物分の融資がなされます。着工金や中間金を支払うために、ある程度の現金を持っていないといけないという点に注意しましょう。
土地先行融資のメリット
- 土地購入時から低金利で借りられる
土地先行融資のデメリット
- 土地購入時に抵当権設定が必要
- 着工金や中間金のために現金が必要
つなぎ融資(分割融資)
つなぎ融資とは、建物が完成し、引き渡し時に住宅ローンを実行するまでのつなぎとして利用する融資のことをいいます。土地と建物1本立ての住宅ローンであり、つなぎ融資自体は無担保ローンであるため、土地を担保に融資を受ける土地先行融資と比べて、つなぎ融資分の金利は高くなります。
つなぎ融資は住宅ローンとは別のローンであり、土地購入時の代金や着工金、中間金を無担保ローンで借り受け、建物完成後の引き渡し時に、つなぎ融資分を清算し、住宅ローンに一本化します。
土地先行融資と比べて、土地購入時に抵当権設定が不要で、建物完成前の各支払い時に融資を受けられるのが大きな特徴ですが、無担保ローンのためつなぎ融資分の金利が高くなる点に注意が必要です。
つなぎ融資のメリット
- 建物完成前に分割で融資を受けられる
- 土地購入時に抵当権設定が不要
つなぎ融資のデメリット
- 無担保ローンのためつなぎ融資分の金利が高い
このように、土地購入時には「土地先行融資」と「つなぎ融資」の2種類があり、それぞれに特徴があります。ご自身の状況に合わせてどちらが適したローンかを考えるようにしましょう。
住宅ローン利用時の土地購入の流れを解説
注文住宅でマイホームを建てたい場合、まずは土地探しから始める必要があります。理想のマイホームを建てるためにも、まずは土地購入の流れをしっかり理解しておきましょう。
土地購入にはさまざまなステップが必要となります。ここからは、土地を購入する流れを解説いたします。
①土地探し
まずは土地探しからです。どのような土地にマイホームを建てるか検討することはとても重要です。駅や学校などからの距離、日当たり、街の治安など、様々な角度から考える必要があります。
また、万が一災害が発生した際にも被害が及ばない安全な土地を選ぶためにも、ハザードマップの確認も忘れないようにしましょう。インターネットを駆使して土地情報を収集するだけでなく、不動産会社やハウスメーカーにも依頼して、希望に合った土地を探すことが重要です。
②買付証明書の提出
理想の土地が見つかったら、不動産会社に買付証明書を提出します。買付証明書とは土地の購入を希望する人が、その売主に「その土地を買いたい」という意思表示を行う書類です。不動産会社指定の買付証明書に住所・氏名・購入希望価格、引き渡しの希望条件などを記載します。
③住宅ローン事前審査申込
土地の購入に住宅ローンを利用する場合には、買付証明書の提出後に事前審査の申込みを行います。住宅ローンの審査には事前審査と本審査があり、一般的にはこのタイミングで事前審査を行います。
事前審査は購入申し込み後の1~2週間以内に行われ、3~4日で審査は完了します。なお、基本的には事前審査時に建物のプランや見積もりを提出する必要があるため、事前審査の申込み時までに工務店やハウスメーカーに書類作成を依頼しておきましょう。
④不動産の売買契約を締結
住宅ローンの事前審査を通過したら不動産の売買契約を締結します。不動産の売買契約は、重要事項説明書と売買契約書の両方を説明することによって行います。
重要事項説明書には、購入しようとしている土地にかけられている法令上の制限などが記載されています。制限内容によっては、希望の建物が建てられない可能性もあるため、建物の建築を依頼する工務店やハウスメーカーに内容を確認してもらうようにしましょう。
⑤住宅ローン本審査申込
売買契約の締結が完了したら、次は住宅ローンの本審査を行います。住宅ローンの本審査は、事前審査よりも提出書類が多く、売買契約書や重要事項説明書のコピー、市役所発行の課税証明書や住民票、印鑑証明書などを用意して金融機関に提出します。
審査期間も事前審査より長く、1週間~2週間程の期間が必要となります。又、事前審査と違い、多くの金融機関では直接店舗に訪問しての本審査の申込みを行う必要があります。
⑥銀行と金銭消費貸借契約を締結
住宅ローンの本審査が完了したら、その後は金融機関と金銭消費貸借契約(金消契約)を締結します。金消契約とは、金融機関とローン契約者が借入金額・返済期間・借入金利・返済方法などについて約定するための契約です。
金融機関によって、ローン実行当日(決済日)に行う場合もあれば、決済日の数日前に契約しなければいけない場合もありますので、事前に金融機関の担当者に確認しておくようにしましょう。
⑦土地の引き渡し・所有権移転登記
金消契約が完了したら、あとは決済(土地の引き渡し)を迎えることになります。土地の引き渡しとは、具体的には売主に売買代金の残代金、仲介業者や司法書士等に各諸費用の支払いを行い、土地の所有権を売主から買主に移転させることをいいます。
決済は基本的に住宅ローンを利用する金融機関のスペースを借りて行います。そのため、金融機関が営業している平日に行われるのが一般的です。決済については、別の記事でも詳しく解説しているので、もっと詳しく知りたい方はそちらの記事をご参考ください。
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不動産の決済(引き渡し)では何をする?決済当日の必要書類と流れを解説
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後悔しないための土地購入時の8つの注意点とは?
ここからは、土地選びの際に気を付けてほしい注意点をご紹介していきます。土地の購入後だと取り返しのつかないことにもなりかねないので、土地の購入を決める前にしっかりと確認しておくことをおススメいたします。
それでは、土地の購入時にはどのような注意点があるのでしょうか。ここでは代表的な注意点にピックアップして解説していきたいと思います。
用途地域や地区計画を確認する
土地を購入したからといって、どんな建物でも建てて良いかと言えば、決してそうではありません。建てて良い建物の用途や大きさは用途地域によって分けられているため、計画している建物が建てられるかどうかを確認する必要があります。
又、用途地域によって、周辺の雰囲気も大きく変わります。商業地域の場合は、土地の周りに商業施設がたくさんあって賑やかですが、逆に低層住居専用地域は閑静な住環境になっているのが一般的です。
さらに地区計画で建物の制限がかけられている場合があります。例えば用途地域では店舗付き住居を建てられるけど、地区計画によって店舗付き住居の建築ができない地区もあったりするので、土地の購入を決める前に用途地域や地区計画の確認し、どのような建物が建てられるかをしっかり把握しておくようにしましょう。
隣地との境界や越境状況を確認する
かなり昔から住宅が建っている土地だと、隣地との境界標が残っていない土地がほとんどです。その場合には、売主が持っている資料や法務局に残っている地積測量図である程度の境界を把握することができます。
地積測量図が残っていない土地も数多く存在しているので、その場合は土地家屋調査士に測量を依頼するなどして、購入する土地の範囲がどこまでなのかを把握するようにしましょう。
又、図面上では建築が可能なプランでも、現地で越境があると物理的に建築ができなくなってしまう可能性もあるため、境界の位置を把握するとともに、越境がないかどうかも確認しておくことが重要です。
接道している道路の幅員・種類・所有者を確認する
建物を建てる際には、建物を建てようとする土地が建築基準法上の道路に2m以上接道していなければいけません。これを「接道義務」と言いますが、接道義務を満たしていない土地には建物を建てることができないため注意が必要です。
又、接道している道路が4m未満の場合には、自分の土地を道路として提供する、いわゆるセットバックが必要になりますが、セットバックを行うことで建築対象面積が小さくなってしまい、その分建てられる建物も小さくなってしまいます。
他にも、建物を建てるために土地の掘削が必要になることがありますが、道路所有者の同意が必要になることもあります。前面道路が私道で、道路の所有者が複数人いる場合にはその分同意者も多くなってしまうため注意しましょう。
建ぺい率と容積率を確認する
土地には建ぺい率と容積率が決められています。建ぺい率によって土地に対する建築可能な面積が定められ、容積率によって土地に対する延床面積が定められています。そのため、仮に土地面積が全く同じ土地であっても、建ぺい率と容積率が異なると建てられる建物の大きさも変わります。
例えば土地面積が200㎡で、建ぺい率50%・容積率100%の土地の場合、1階あたりの建物面積は100㎡、全体の延床面積は200㎡が上限になりますが、建ぺい率80%・容積率300%の土地の場合は、1階あたりの建物面積は160㎡、全体の延床面積は600㎡が上限となります。
近くのエリアであっても、建ぺい率と容積率は異なることが多いため、購入を検討している土地の建ぺい率と容積率は何パーセントなのかを事前にしっかり確認しておきましょう。
道路や隣地と高低差がないか確認する
建物を建てようとする土地に道路や隣地との高低差がある場合には、土地の造成費用が必要になったり、がけ条例により高低差がある部分から一定の距離を離して建物を建てなければいけなくなり、予定していた建物が建てられなくなる可能性があります。
造成をする場合には相応の費用が必要になりますし、造成部分から大きな岩盤などが発掘された場合、岩盤の処分に高額な費用が発生してしまうリスクがあります。又、パッと見はキレイな擁壁があって建て替え時に擁壁を作り直す必要がないと判断した土地でも、擁壁の検査済証がない場合には、建物の新築時に造成工事が必要になるケースもあります。
道路や隣地と高低差があり、高台にある土地は見晴らしが良い場合も多いため、良いところに目が向いてしまいがちですが、高低差がある土地には平坦地とは違うリスクがあることを認識し、対策案を考えてから購入を決めるようにしましょう。
隣の建物と繋がっていないか確認する
隣の土地と建物が繋がっている場合には、当然のことながら建物を切り離して解体しなければいけません。通常、建物の解体は重機を使って解体されることが多いですが、隣の建物との接合部分は手バラシでの作業になるため、解体費用が高くなってしまいます。隣の建物の補修費用が余分にかかることもあるため注意が必要です。
又、隣の建物の柱が境界の中心地になるケースも多く、その場合には必然的に隣の建物が越境状態となります。越境状態になると、その部分の土地には建物が建てられず、実際の有効面積が小さくなってしまうことを認識しておきましょう。
土地の形状を確認する
日本中には様々な形状の土地が存在しています。土地の形状に合わせて建物を建てる必要があるため、土地が歪な形状をしていると建物自体も歪な形状になってしまいます。
例えば三角形の土地に合わせて建物も三角形にすると、部屋の使い勝手に影響するだけでなく、構造計算が複雑になるため設計費用や建築費用も高くなる傾向にあります。
又、将来的に土地を売却する場合の売却価格にも影響を与えるため、土地の形状を事前に確認し、「思った通りの建物は建てられるか?」「土地価格は妥当か?」を十分に検討するようにしましょう。
周辺環境を確認する
土地は動かすことができないため、購入を決める前には周辺を歩くなどして住環境が自分たちに合っているかを確認しておきましょう。
例えば繁華街等にある土地では、子育てにはそぐわない施設が建っている場合もあります。マイホームを購入した場合、賃貸住宅のように簡単に引っ越すこともできないため、事前に周辺環境を十分確認しておくことが大切です。
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本記事では、土地を購入する際の住宅ローンの取り扱いや購入までの流れ、土地選びの注意点をご紹介いたしました。初めて土地を購入する人にとっては分からないことも多いと思いますので、本記事が少しでもお役に立てば光栄です。
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それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。