注文住宅で家を建てたり中古戸建を購入する際に、場所や間取り、デザインに関心がある人が多く、「基礎」にまで気をかけている人は少ないように思います。
基礎は生活していて見える部分ではないため関心がない人が多くても仕方ありませんが、基礎は名前のとおり「建物の基礎」となるとても重要な部分です。
この記事では、建物を支える重要な役割を持つ「基礎」について解説していきます。
そもそも基礎ってどんな部分?
基礎とは、地面と建物をつなぐ重要な役割を持っているとともに、地面からの水分(湿気)を上手く逃がす役割も担っています。
基礎に求められる機能としては、このようなものが挙げられます。
基礎に求められる機能
- 建物の荷重をバランスよく地面に伝え、 建物に傾きが発生するのを抑える
- 地震や風など、外部から加えられる縦方向・横方向の力を吸収し、建物の倒壊を防ぐ
- 地面から発生する水分(湿気)を外部に逃がし、建物の腐食を防止する
基礎は建物を支える土台の部分です。数十年間という長期間建物を良い状態に保つために、基礎の性能はとても重要なポイントだといえるでしょう。
もちろん基礎の下には地盤があり、地盤が強固であることも重要です。基礎工事を行う前にしっかりと地盤調査を行い、地盤が軟弱であれば地盤改良工事を行います。
強固な地盤に丈夫な基礎を造ることで、長期的に建物の状態維持が可能になります。
布基礎とベタ基礎の構造の違い
建物の基礎にはいくつも種類があり、建てる建物によって基礎を選ぶ必要があります。
戸建住宅などの比較的小さな建物を建てる場合と、高層マンションなどの大きな建物を建てる場合とでは、基礎に求められる強度や性能が異なるからです。
基礎の種類は約10種類ほどあると言われていますが、今回は戸建住宅によく使われている「布基礎」と「ベタ基礎」について説明していきます。
布基礎の構造
布基礎は、日本の木造住宅で以前から多く採用されてきた基礎の種類です。平成初期以前に建てられた中古戸建には、この布基礎が多く使われています。
外面だけ見るとベタ基礎と同じように思えますが、住宅を支えるのは基礎が立ち上げっている部分のみです。
すべての面に基礎を作るのではなく、柱を立てる箇所とその間を縫うように基礎が作られています。
写真のように、地面が抜き出しになっている場合と、地面の上に防水シートを敷き、その上にコンクリートを施工する場合の2通りがあります。
その場合のコンクリートの厚さは5~6cmと薄く鉄筋も入っていないため、強度を高める役割は持っておらず、土の水分を建物に浸透させないために作ります。
布基礎の特徴
布基礎は、柱を立てる箇所とその間にしか基礎はありません。
後述するベタ基礎と比べ、基礎のボリュームが少ないため、建物の荷重を支えるところが少なくなってしまいます。
布基礎は、建物を点で支える構造になっています。建物の荷重が1か所に集まり、基礎への負担が多くなったり、建物のバランスが崩れ地盤沈下が発生しやすくなります。
地面からの水分(湿気)が上がりやすく、シロアリの被害を受ける可能性も高くなってしまいます。
布基礎のメリット
- 建築コストを抑えやすい
布基礎のデメリット
- 耐震性や基礎の強度がベタ基礎と比べて不利
- 湿気やシロアリ被害により建物が傷みやすい
ベタ基礎の構造
ベタ基礎は布基礎と比べると新しい技術で、最近建てられる戸建住宅にはほとんどベタ基礎が使われています。
中古戸建の場合でも、おおよそ平成10年以降に建てられた建物はベタ基礎が採用されているケースが多いです。
ベタ基礎は立ち上がっている部分だけでなく、全ての部分に鉄筋を入れたコンクリートで一体化し、大きな面で建物を支えることができます。
ベタ基礎の特徴
布基礎と大きく違うのは、全ての部分に鉄筋コンクリートの基礎が作られていることです。
点で支える布基礎と比べ、大きな面で建物を支えることができるので、建物の荷重を分散させることができます。
建物の荷重を分散させることで、基礎の一部分への負担を軽減し、地盤沈下を減らすことができます。
床下の地面をすべて厚いコンクリートで覆うことで、地面からの水分(湿気)やシロアリによる被害も防ぐことができます。
床下被害のほとんどがシロアリや湿気による木材の腐食のため、その被害を減らすことは住宅寿命の長期化につながります。
ベタ基礎のメリット
- 耐震性に優れ、不同沈下が起きにくい
- 湿気が建物まで上がりにくい
- シロアリ被害に遭いにくい
ベタ基礎のデメリット
- 建築コストが高くなる
まとめ
これまでベタ基礎と布基礎の違いについて紹介してきました。
ベタ基礎と布基礎の大きな違いは、地面全体に鉄筋コンクリートが施工されているかどうかです。
ベタ基礎の方が建築費用は高くなってしまいますが、その差額も一般的な建物(延べ床30坪程度)なら大体10万円~20万円です。
工期にもさほど違いがないことを考えると、これから新築をお考えの場合はベタ基礎で建築した方が良いかもしれません。
しかし、寒冷地の場合は「凍結深度」というものが設けられていて、ベタ基礎にした場合の建築費用が大幅に上がってしまう傾向にあります。
住んでいる地域に詳しい工務店に相談し、コストパフォーマンスを踏まえて判断するようにしましょう。