ZEH住宅の普及によって、壁や床、天井などに断熱材を使って高い気密性と断熱性を実現する高気密・高断熱の住宅が注目されています。それに伴い、全館空調システムや床下エアコンの導入を検討している方も増えています。
断熱材の役割は、部屋の中と外の熱遮断を行なうことです。そのため、床下の断熱は「床下空間を部屋の内部と考えるか外部と考えるか」によって断熱材の種類や施工方法が異なります。
全館空調や床下エアコンの導入を考えている人にとっては、特に重要なことなので「基礎断熱」と「床断熱」の違いをしっかり理解しておきましょう。
目次
基礎断熱工法とは?
基礎断熱工法とは一般的に「基礎断熱」との略称で呼ばれ、床下空間を住宅内部と考え、基礎コンクリートに断熱材を施工して、外部との断熱を行なう施工方法です。床下の温度をコントロールできるため、床下を利用して住宅内部全体に空気を送り出す全館空調システム、床下エアコンなどを導入する場合には、基礎断熱の施工方法が用いる必要があります。
基礎断熱には、基礎の外側に断熱材を施工する「基礎外断熱」と「基礎内断熱」の2種類がありますが、いずれも床下は密閉され、床下に外気が流入しないように施工されます。
基礎断熱がよく使われるようになったのには、床下全体を基礎コンクリートで覆うベタ基礎が主流になってきたのも影響しています。昔の住宅では、建物の壁面に合わせて部分的に基礎コンクリートを打つ布基礎が一般的でした。布基礎は地面が露出しているため「床下=外部」ということになり、後述する床断熱が当たり前のように用いられていました。
ベタ基礎が普及することで「床下=内部」という考えが持てるようになったため、最近では基礎断熱で建てられる住宅も着実に増加しています。
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基礎断熱と床断熱の特徴の違い
床断熱とは、床下空間を建物の外部として考え、一階の床のすぐ下に断熱材を施工する方法のことです。基礎コンクリートには通気パッキンや通気口が設けられ、外気にさらされる状態になっています。
床下には外気が入ってくるため床下の温度をコントロールすることができませんが、常に換気されているため基礎内部に湿気が溜まりにくいという特徴があります。
しかし、寒冷地などでは冬場に冷気が床下に流れ込んでくるため「足元が寒い」「床が冷たい」と感じる場面もあるかもしれません。
基礎断熱と床断熱の最も大きな違いは、どこに断熱材を施工するかという点です。上図のように、基礎断熱は床下に外気が入ってこないため、暖かい環境をつくりやすいという特徴があります。
床断熱も床のすぐ下に断熱材を敷いていますが、重力によって断熱材が下がってしまうことで床面の間に若干のすき間ができてしまい、そこから冷気が伝わる可能性も考えられます。
断熱材と床面にすき間ができることによって、寒い地域では内部と外部の温度差によって結露が発生し、木材の腐食やシロアリが発生するケースもあります。
全館空調システムや床下エアコンは、床下を使って暖かい(冷たい)空気をお家の中全体に送り出すため、基礎の内部も断熱されておかなければなりません。
そのため、全館空調システムや床下エアコンを導入する場合には、基礎断熱を用いて基礎内部の断熱を行なう必要があります。
基礎断熱のメリット・デメリット
床断熱と基礎断熱のそれぞれの特徴についてご理解いただけましたか?「床断熱は床で断熱する」「基礎断熱は基礎で断熱する」といったように、名称通り覚えておいてもらえると分かりやすいと思います。
基礎断熱は、基礎で気密と断熱を行なうため「床下に空気が流入しない」という特徴から、床断熱と比べていくつかのメリット・デメリットが存在しています。ここからは、基礎断熱にはどのようなメリット、デメリットがあるのか見ていきましょう。
基礎断熱のメリット
気密性を確保しやすく気温が安定しやすい
基礎断熱は基礎パッキンに「断熱気密パッキン」を使用するため、床下に外気が侵入してきません。室内と床下が同じ環境になるため、冬でも床下からの冷たい温度が伝わり心配がなく、室内の気温が安定しやすいという特徴があります。
最近では、吹き抜けやリビング階段などを採用し、1階と2階が遮られていない住宅も多くなってしましたが、そのような住宅には特に基礎断熱がオススメです。
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地熱が利用できるため省エネ効果が期待できる
基礎が伝導体となり、地面の熱を室内に伝えます。冬場や外気より地熱の方が暖かく、逆に夏場は外気より地熱が冷たいのが一般的です。コンクリートが蓄熱層としての働きをし、室内を快適な温度に保つための補助的な役割を果たしてくれます。
地熱の温度が年間を通して10℃~15℃の安定した温度に保たれるため、床断熱と比べて冷暖房設備の稼働を最小限に抑え、省エネの効果が期待できます。
施工がしやすく職人による違いが出にくい
基礎断熱の基礎パッキンには気密パッキンを使います。気密パッキンは、床断熱に用いる通気パッキンと比べて施工が簡単です。そのため、工事を行なう職人によっての違いが生じにくく、完成度にバラつきが出にくいという特徴があります。
また、断熱材で床下を覆い隠す床断熱と違い、床下をオープンな状態で施工ができるため、施工状態を確認しながら工事ができるのもメリットだといえるでしょう。
配水管が凍結を起こしにくい
外気が床下に入る床断熱と違い、外気を遮る基礎断熱では床下の温度が室内の温度に近い状態が保たれます。そのため、床下にある配水管が凍結する心配がほとんどありません。
床断熱の場合は、床下の温度が外気温と同じになってしまうため、寒冷地などの場合には、電気で凍結を防止させる凍結防止帯を稼働させるための電気代が必要になります。基礎断熱ではそれらの電気代を節約できるため、若干の電気代の節約が期待できます。
基礎断熱のデメリット
シロアリ対策が必ず必要になる
基礎断熱の最大のデメリットともいえるのが、床断熱よりもシロアリに対する対策が必要になるという点です。シロアリは光や風を避けながら、自ら「蟻道(ぎどう)」といわれる専用の通路をつくって侵入してきます。
床断熱であれば床下を目視することで発見することができますが、基礎断熱の場合は断熱材の中を通って土台や柱に到達するケースがあるため、シロアリの被害に気付くのが遅れる可能性があります。
断熱材のメーカーも「防蟻処理断熱材」などを販売していますが、断熱材と基礎のすき間を伝って侵入する場合もあるので注意が必要です。
どうしても気になる場合は、基礎のまわりにパイプを埋設し、定期的に防蟻処理剤を注入するシステムの導入などを検討してみましょう。
主なシロアリ対策
- 防蟻処理がされた断熱材を使用する
- 基礎のまわりにパイプを埋設し、定期的に防蟻処理剤を注入する
- 断熱材の外側に目が細かい金属メッシュを設置する
- 床下換気システムを導入して常に床下を換気する
これらの対策を講じることで、シロアリの被害リスクを抑えることができます。
建物完成後1年~2年はカビが発生しやすい
基礎に使われるコンクリートは、完成後すぐに完全に乾燥するわけではなく、1年~2年の間は微量に水分を含んでいます。そのため、床下が換気されない状況だとカビが発生しやすくなってしまいます。
1階の床にガラリ(通気口)を設けて床下の空気循環を促したり、床下も含めて24時間換気の設計を行うなどをして、床下の換気性を高める必要があります。
主なカビ対策
- 床下用に断熱換気口を複数個所に設置する
- 1階の床に通気口を設置し、室内と床下の空気を循環させる
- 24時間換気を、床下も含めた換気経路で設計する
これらの対策を講じることで、床下でカビが発生するリスクを下げることができます。
基礎断熱の種類と特徴
ここまで床断熱と基礎断熱の違いを重点的にお伝えしてきましたが、ここからは基礎断熱の種類とその特徴についてお伝えしていきます。
基礎断熱には主に「基礎外断熱」と「基礎内断熱」の2種類が存在しています。
- 基礎外断熱・・・断熱材を基礎コンクリートの外側に貼る施工法
- 基礎内断熱・・・断熱材を基礎コンクリートの内側に貼る施工法
上図を見ていただくとお分かりのように、断熱材を基礎の外側に貼るか内側に貼るかの違いによって特性に違いが生まれます。
どのような違いがあるのか順に見ていきましょう。
基礎外断熱の特徴
基礎外断熱は、基礎の外側に断熱材を貼るため、コンクリートの劣化を防ぎ耐久性を向上させることができる反面、断熱材が風や日光にさらされるため、断熱材の劣化が早いことが懸念されます。
断熱材を住宅外面の一番外側に配置するため、基礎コンクリートが冷えることを防止でき、最も高い断熱性が期待できます。
しかし、断熱材と基礎コンクリートのすき間を通ってシロアリ被害が侵入し、侵入時も断熱材によって隠され発見しにくいというデメリットがあります。
断熱材と基礎コンクリートのすき間はシロアリ被害が多い箇所です。しっかり防蟻処理を行なわないと、家中がシロアリ被害を受けてしまう可能性があるので注意が必要です。
引用元:アーキトリック一級建築士事務所
基礎外断熱のメリット
- 基礎コンクリートの劣化が遅い
- 断熱効果が高い
基礎外断熱のデメリット
- シロアリ被害を受けやすい
- 断熱材の劣化が速い
このほかにも、外側に断熱材を貼ることによって基礎コンクリートの乾燥速度が遅くなり、基礎内断熱と比べて床下空間のカビや結露発生のリスクが若干高くなることが考えられます。しっかり換気対策を行なっておくようにしましょう。
基礎内断熱の特徴
外面に断熱材が貼られている基礎外断熱と比べて、基礎内断熱は若干シロアリ被害リスクは低くなります。断熱材は「発泡系断熱材」という柔らかい素材でできているため、シロアリが容易にかじって断熱材に蟻道(ぎどう)という建物内への侵入経路をつくります。
基礎内断熱は、基礎の内部に断熱材があるため、シロアリ被害のリスクが低くなります。そのため、シロアリ被害が多い地域では基礎内断熱が多く採用されています。
引用元:アーキトリック一級建築士事務所
基礎内断熱のメリット
- シロアリ被害を受けにくい
- 断熱材の劣化が遅い
基礎内断熱のデメリット
- 断熱効果が基礎外断熱より劣る
基礎コンクリートに、日光や自然風が直接あたるため、基礎コンクリートの乾燥期間が早いのも特徴です。コンクリートが乾燥することで床下内の湿度を下げることができるため、その分シロアリ被害のリスクを下げることができます。
気密パッキンによって外気が侵入しないため、室内と同じ環境をつくることができ、冬などに床下からの冷気の侵入がなく快適に過ごすことができます。
基礎断熱の記事まとめ
今回の記事では基礎断熱について紹介してきました。床断熱と基礎断熱にはそれぞれ特徴があり、どちらが良いとはなかなか言い難いのが実際のところでしょう。
又、床下エアコンや全館空調システムを導入する場合には、基礎断熱しか選択肢がなくなるため、地域に合わせて「基礎外断熱」か「基礎内断熱」かを選ぶことになります。
一般的に基礎外断熱の方が費用が高いので、費用面やメリット・デメリットを考慮して、どの施工方法にするかを選ぶようにしましょう。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
■最後と書きましたが、高断熱仕様は当たり前の時代に。
2030年には基準変更で高断熱仕様の家しか建てられません!
理想のマイホームで快適に過ごしていただくためにも、断熱材の種類やどの施工方法を選ぶかはとても重要なポイントです。
また、2030年に基準がガラッと変わってしまうため、現在の基準で建ててしまうと家の価値が2030年を境に大きく下がってしまう可能性が高いです。
それだけではありません!
高断熱住宅にすることで多くのメリットがございます。
高断熱住宅だと、、
✅エアコン台数を1台から2台で家全体をまかなえる
✅寝る前に消しても朝まで2℃ほどしか室温が変わらない
✅先ほどお伝えした基準変更で家の価値が下がらない
などのメリットがあります。
そして、
「更にある設備をプラス」することで光熱費を格段に下げることもできます。
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