新築住宅における住宅瑕疵担保責任保険の概要や適用範囲を分かりやすく解説!

2022年11月30日

新築住宅における住宅瑕疵担保責任保険の概要や適用範囲を分かりやすく解説!

住宅の「瑕疵」という用語をご存じでしょうか。簡単に言うと「住宅構造部の欠陥」と言いかえることが出来ます。

当然ながら瑕疵はないに越したことはありませんが、どれだけ丁寧に新築住宅を建てたとしても完全にゼロにすることは難しく、住宅事業者にも予期せぬ瑕疵はどうしても起きてしまう可能性があります。

建物の引き渡し後に瑕疵が見つかった場合、基本構造部分においては住宅事業者による保証が10年間付きますが、住宅事業者が倒産してしまった場合、保証を受けることができなくなってしまいます。

そこで登場するのが「住宅瑕疵担保責任保険」です。この記事では、住宅瑕疵担保責任保険について、分かりやすく解説します。

住宅瑕疵担保責任保険とは?

住宅瑕疵担保責任保険とは?

まずは住宅瑕疵担保責任保険とはどのようなものかをお伝えしていきます。住宅瑕疵担保責任保険は万が一に備えておくとても重要な保険です。

不動産に関する用語には難しい言葉が多く存在していて難解に感じるかもしれませんが、安心して家に住み続けるためには必要な知識なのでしっかりと理解しておきましょう。

住宅瑕疵担保責任保険の概要

住宅瑕疵担保責任保険とは、住宅事業者の瑕疵担保責任に対する保険のことです。新築住宅を供給する住宅事業者は、平成12年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、住宅の主要構造部分や雨水の侵入を防止する部分の欠陥については、10年間の保証(瑕疵担保責任)を負うことが義務付けられています。

しかし、そのような保証が付けられていても、住宅事業者の倒産等によって、購入者が自ら修繕や建て替えを行わなければいけない事態が相次ぎ、住宅購入者の保護を目的とした「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が平成19年3月に施行されました。

平成21年10月からは、住宅事業者は住宅瑕疵担保責任保険に加入し、万が一会社が倒産しても、住宅購入者に不利益が被らないようにしたうえで、新築住宅を引き渡さなければいけないことになりました。

なぜ住宅瑕疵担保責任保険が必要なのか?

冒頭でお伝えしたとおり、新築住宅であったとしても、瑕疵を完全にゼロにすることは困難です。そして、万が一引き渡し後に瑕疵が発見された場合には、不具合箇所に応じた補修が必要となります。

例えば、住宅を構成する構造部材の接合が間違っていたとすれば、耐震性が著しく低下してしまいますし、外壁のコーキングに問題があれば水分が壁内に侵入し、建物を腐食させてしまいます。

そのような瑕疵が発見された場合には、住宅の品質確保のために修繕が必要になりますが、修繕には高額な工事費用が必要になるケースも多々あります。

本来であれば10年以内の基本構造部の不具合に関しては、住宅事業者が保証してくれますが、万が一住宅事業者が倒産してしまっている場合はどうなるのでしょうか?

住宅瑕疵担保責任保険はこのような事態に備える保険です。

住宅瑕疵担保責任保険に加入しておくことで、新築住宅の引き渡し後に瑕疵を発見し、万が一住宅事業者が倒産していた場合であっても、瑕疵担保責任保険の期間内であれば、修繕費用を保険会社が負担してくれるため、住宅購入者の利益を保護するために重要な役割を持っているといえます。

住宅瑕疵担保責任保険の適用範囲

住宅瑕疵担保責任保険の適用範囲は、住宅の構造耐力上の主要な部分と雨水の侵入を防止する部分で、10年間の瑕疵担保責任を対象としています。

具体例は後ほどお伝えしますが、構造耐力上での主要部分は柱・梁・壁などで、耐震性や積雪荷重、そして耐風圧などに重要な部材です。また、雨水の侵入に関する部分は屋根・外壁・開口部などです。

具体例は次の通り。ポピュラーな工法の戸建て住宅の木造の在来軸組工法と、マンションなどの鉄筋コンクリート造(壁式工法)について挙げてみましょう。

木造(在来軸組工法)の戸建住宅の場合

構造耐力上主要な部分

  • 基礎
  • 土台
  • 床版
  • 横架材
  • 斜材
  • 屋根版
  • 小屋組

雨水の侵入を防止する部分

  • 屋根
  • 開口部
  • 外壁

引用元:日新工業株式会社

木造(在来軸組工法)の戸建住宅の場合

構造耐力上主要な部分

  • 基礎杭
  • 基礎
  • 外壁
  • 床版
  • 屋根版

雨水の侵入を防止する部分

  • 屋根
  • 開口部
  • 外壁
  • 排水管

いずれの部分も建物の健全性に直結し、安全で快適な生活を送るためには不可欠の部分です。

そして、長く利用するためにも品質が確保されていなければなりません。これらの部分は分かりにくい部分や、後になって問題が分かる部分もあります。

瑕疵担保責任の履行を保証する瑕疵担保責任保険は、生活する人の安全で快適な生活のためにも重要な保険といえるでしょう。

住宅瑕疵担保責任保険の種類は何がある?

住宅瑕疵担保責任保険の種類は何がある?

次に、住宅瑕疵担保責任保険の種類を挙げてみましょう。住宅瑕疵担保責任保険は国土交通省の指定保険法人が取り扱っています。

保険法人はいくつかありますが、代表的なのが次の3つの保険です。ここでは、それぞれの保険について解説していきます。

まもりすまい保険

まもりすまい保険は住宅保証機構株式会社が取り扱う保険です。「住宅瑕疵担保責任」と「検査」がセットになっています。すべての住宅事業者・すべての新築住宅に適用可能です。

まもりすまい保険の特徴として、第三者による防水検査がオプションで付けられる点が挙げられます。地階を含む3階建て以下の住宅に対応し、住宅のプロの検査を受けることが出来るサービスです。

サービスの検査を行う検査員の9割が一級建築士のため、安心して検査を任せることが出来ます。

保険事故の93%は屋根や外壁からの雨漏りであり、防水の良し悪しは建築のプロでなければ検査が難しい部分です。この部分のチェックに住宅のプロが携わってくれることは、非常に大きなメリットだといえるでしょう。

JIOわが家の保険

JIOわが家の保険は、株式会社日本住宅保証機構(JIO)が取り扱う住宅瑕疵担保責任保険です。JIOわが家の保険の特徴は、建設中の住宅の現場検査をする点にあります。

住宅の内部はプロが見ない限り、どこに不具合があるのかが分かりません。特に、壁や床下などの場合には施工後は見えなくなってしまうので、問題が見つかるのには時間が掛かってしまいます。

例えば、壁は住宅の構成において非常に重要です。壁は住宅の耐震性を決める上で非常に重要な部分だからです。住宅には様々な方向から外力が加わりますが、壁は横からの外力に耐えるために不可欠です。

仮に新築工事の施工に問題があった場合、それらの問題は引き渡し後にも継続されることになってしまい、お家に住んだ後の地震や台風に対するリスクが高まってしまいます。

検査機構による検査だけでなく、保険会社による建設中の現場検査が行われることで、住宅内部の検査もしっかり行うことができるため、住宅内部の問題発見に有効な方法だといえます。

あんしん住宅瑕疵保険

あんしん住宅瑕疵保証は、株式会社住宅あんしん保証が取り扱う住宅瑕疵担保責任保険です。

あんしん住宅瑕疵保険もオプションで防水検査などを追加することができるとともに、構造金物や断熱材などのオプション検査を受けることも可能です。

又、Web(あんしんWebシステム)による申し込みに適用される割引制度が用意されているため、認定した団体に属する会員が供給する住宅の場合はさまざまな割引適用を受けることができます。

三井住友海上火災保険と提携されていることによって、住宅購入者が三井住友海上火災保険株式会社のGKすまいの保険(すまいの火災保険)の割引が受けられるなど、費用面でのメリットが用意されているのは嬉しい点だといえます。

住宅瑕疵担保責任保険Q&A

住宅瑕疵担保責任保険Q&A

ここまで住宅瑕疵担保責任保険の概要などについて解説して来ましたが、実際に加入する際にはどのような手続きが必要になってくるのでしょうか?

ここからは、住宅瑕疵担保保険の手続き等、実際に加入する際で気になるポイントを取り上げ、Q&A形式でお答えしていきたいと思います。

まず保険料は誰が支払うのか?

住宅瑕疵担保責任保険は、新築住宅の住宅事業者が保険法人と保険契約を締結するため、保険料も住宅事業者が負担することになり、住宅購入者が直接的に費用を支払うことはありません。

住宅瑕疵担保責任保険に加入する手続きも全て住宅事業者が行うことになり、住宅購入者は後述する付保証明書を発行するための書類に署名捺印をするだけで手続きが完了します。

住宅瑕疵担保責任保険への加入の流れは?

住宅瑕疵担保責任保険の加入は、住宅事業者が手続きを行い、次のような流れで加入することになります。

なお、実際の加入の流れは住宅瑕疵担保責任保険を扱う保険法人によって異なりますので、各保険法人に事前に確認しておくようにしましょう。

保険加入の流れ

  1. 着工前の準備
    着工前の準備として現地調査を行います。主に地盤調査によって、現地が建築に適切な状態であるかをチェックします。
  2. 設計
    次に設計を行います。設計は保険法人が提供する「設計工事基準」に適合するように行われます。
  3. 請負契約
    土地所有者と建築会社の間で請負契約を締結します。請負契約締結は、建設業法の定めを遵守し、各保険法人の保険内容に相当する瑕疵担保責任を定めて契約します。
  4. 確認申請・確認通知
    建築物が法令を遵守していて問題無く建てられるかを行政がチェックします。行政が問題ないと判断した場合には、確認通知が行われます。
  5. 保険契約の申込み
    利用する保険法人に対して保険契約の申込み手続きを行います。必要書類は保険法人によって異なりますので確認が必要です。
  6. 着工
    保険法人の設計施工基準に適合するように施工します。
  7. 現場検査
    各保険法人の規定に基づいて現場検査が行われます。1回目は基礎配筋工事完了時、2回目は屋根工事完了時から内装下地張り直前の工事完了時など、各保険法人が決めたタイミングで現場検査が実施されます。
  8. 保険証券の発行申請
    引き渡し日が確定したら保険証券の発行手続きを行います。保険証券は保険請求時に必要になりますので、保険期間満了日まで適切に管理しておく必要があります。
  9. 引き渡し
    住宅の引き渡し時に、住宅購入者に保険付保証明書をお渡しします。

付保証明書はいつもらえる?

付証明書は「この住宅は確実に瑕疵担保責任保険に入っている」ことを証明する書類です。前項でお伝えしたとおり、引き渡し時にもらえます。

付保証名書は契約の締結を証明する書類ですが、保険証券とは異なります。保険証券は住宅事業者が保管するため、住宅購入者は保険付保証明書を保管することになります。

保険に未加入の場合はある?

住宅瑕疵担保責任保険は新築住宅建設の際には義務とされている保険ですが、ごくまれに住宅事業者が「手続きをし忘れていた」等といったケースもあるようです。

なお、住宅瑕疵担保責任保険に代わるものとして、住宅事業者が提供した新築住宅に応じた額の保証金を10年間法務局等の供託所へ預ける方法もありますが、このような方法を取っている住宅事業者はほとんどありません。

2009年に瑕疵担保履行法が施行されてからは、住宅瑕疵担保責任保険の加入が義務付けられておりますので、万が一住宅の引き渡しを受けても付保証明書を受け取っていない場合には、住宅事業者に早急に確認するようにしましょう。

付保証明書がない場合は再発行できる?

万が一付保証明書を紛失してしまった場合であっても、保険法人に手続きを取れば再発行をしてくれます。瑕疵担保責任の期間は10年ですので、この間に紛失してしまった場合は再発行手続きを行いましょう。

住宅瑕疵担保責任保険の契約者は住宅事業者のため、再発行手続きは住宅事業者によって行わなければいけません。住宅事業者に連絡を取り、住宅事業者を通じて再発行手続きを行う必要があります。

住宅瑕疵担保責任保険で安心して住み続けられる

住宅瑕疵担保責任保険は、住宅事業者が必ず入らなければいけない保険であり、万が一住宅事業者が倒産しまった場合でも、瑕疵担保責任を履行できるようにする重要な保険です。

ただし、全ての不具合に対して保険が適用になるわけではなく、保険が適用される範囲は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防ぐ部分」に限定されている点に注意が必要です。

住宅瑕疵担保保険は火災保険などと異なり、住宅購入者が直接的に入る保険ではないため、あまり意識している人も多くはありませんが、万が一に備えてしっかりと知識を備えておきましょう。

本記事を読んで「もっと住宅瑕疵担保責任について詳しく知りたい!」と思った人は、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

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