最近は「空き家の増加が社会問題になっている!」というニュースなどをよく見かけるようになり、空き家増加に関心を持っている人も多いと思います。
一時期は家族の声で賑わっていた住宅が、今は忘れられたかのように放置されている空き家を見かけることも増えてきました。
旅行や出張で地方に出かけたときだけでなく、最近では比較的都心の方でもそのような空き家を見かけることが多くなってきたように感じます。
実際には空き家はどのくらい増加し、空き家が増加することでどのような問題が発生するのでしょうか?
本記事では、社会的に問題になっている空き家の増加について書いていきたいと思います。
どのくらい空き家が増加しているのか?
総務省統計局が昭和38年から5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」により、全国の空き家の数を調べることができます。
直近のデータでは、「平成30年 住宅・土地統計調査」が最新データとなっているため、その統計データを元にどのくらい空き家が増えているのか見ていきましょう。
平成25年からの5年間で26万戸(3.2%)増加
土地統計調査のデータによると、全国で確認されている空き家の数は846万戸(全体の13.6%)となっています。平成25年の空き家の数が820万戸だったのと比べると、5年間で空き家が26万戸(3.2%)増加したことになります。
平成25年以前は毎回50万戸以上増え続けていたので、空き家の増加に少し歯止めがかかったようにも見受けられます。最近は新型コロナウイルスの影響で景気が後退してしまいましたが、これまでの好景気で”空き家を売却する人が増えた”というのも関係があるのかもしれません。
空き家率が一番高いのは「山梨県」
土地統計調査では”都道府県別の空き家率”を公開しており、そのデータによると空き家率が一番高いのは山梨県の21.3%となっています。
次いで和歌山県が20.3%、長野県が19.5%、徳島県が19.4%、高知県及び鹿児島県が18.9%となっており、甲信・四国地方で空き家率が高いのが分かります。
47都道府県の空き家率は以下のようになります。
空き家率ランキング【平成30年】
1位 山梨県 21.3%
2位 和歌山県 20.3%
3位 長野県 19.5%
4位 徳島県 19.4%
5位 高知県 18.9%
6位 鹿児島県 18.9%
7位 愛媛県 18.1%
8位 香川県 18.0%
9位 山口県 17.6%
10位 栃木県 17.4%
11位 大分県 16.7%
12位 群馬県 16.6%
13位 静岡県 16.4%
14位 岩手県 16.1%
15位 岐阜県 15.6%
16位 岡山県 15.5%
17位 宮崎県 15.3%
18位 鳥取県 15.3%
19位 島根県 15.2%
20位 三重県 15.2%
21位 大阪府 15.2%
22位 広島県 15.1%
23位 長崎県 15.1%
24位 青森県 14.8%
25位 茨城県 14.7%
26位 新潟県 14.7%
27位 石川県 14.5%
28位 佐賀県 14.3%
29位 福島県 14.3%
30位 奈良県 13.9%
31位 福井県 13.8%
32位 熊本県 13.6%
33位 秋田県 13.5%
34位 北海道 13.4%
35位 兵庫県 13.4%
36位 富山県 13.2%
37位 滋賀県 13.0%
38位 京都府 12.8%
39位 福岡県 12.7%
40位 千葉県 12.6%
41位 山形県 12.0%
42位 宮城県 11.9%
43位 愛知県 11.2%
44位 神奈川県 10.7%
45位 東京都 10.6%
46位 沖縄県 10.2%
47位 埼玉県 10.2%
こちらの数値には、二次的住宅(別荘など)の空き家も含まれているため、実質的な空き家数はもう少し少ない数値になりますが、全体的に見ると地方の空き家率が高くなっています。
都市圏では大阪府の空き家率が15.2%と最も高くなっており、東京都の10.6%と比べて高い空き家率であることが分かります。
空き家数が一番多いのは「東京都」
次に、それぞれの都道府県でどのくらいの空き家があるのか見ていきましょう。
空き家率ランキングでは45位と下位にランクインしていた東京都ですが、空き家の数では809,000戸で堂々の1位にランクインされています。
空き家の数ランキング【平成30年】
1位 東京都 809,000
2位 大阪府 709,000
3位 神奈川県 483,000
4位 愛知県 391,000
5位 千葉県 381,000
6位 北海道 378,000
7位 兵庫県 360,000
8位 埼玉県 346,000
9位 福岡県 327,000
10位 静岡県 281,000
11位 広島県 216,000
12位 長野県 197,000
13位 茨城県 196,000
14位 京都府 172,000
15位 鹿児島県 166,000
16位 栃木県 161,000
17位 群馬県 157,000
18位 新潟県 146,000
19位 岡山県 142,000
20位 岐阜県 140,000
21位 愛媛県 130,000
21位 三重県 130,000
21位 宮城県 130,000
24位 山口県 127,000
25位 福島県 123,000
26位 熊本県 110,000
27位 長崎県 100,000
28位 和歌山県 98,000
29位 大分県 97,000
30位 岩手県 93,000
31位 山梨県 90,000
32位 青森県 88,000
32位 香川県 88,000
34位 奈良県 86,000
35位 宮崎県 84,000
36位 滋賀県 81,000
37位 石川県 78,000
38位 高知県 74,000
38位 徳島県 74,000
40位 沖縄県 67,000
41位 秋田県 60,000
42位 富山県 60,000
43位 山形県 54,000
44位 佐賀県 50,000
45位 島根県 48,000
46位 福井県 45,000
47位 鳥取県 39,000
空き家の数では、都市部に行くほど上位にランクインされています。
空き家の増加は地方の問題というイメージが強いですが、都市部でも空き家が増加が問題になっていることが分かると思います。
用途別では「賃貸住宅」の空き家が一番多い
次は、空き家の用途別のランキングを見ていきましょう。
用途には、アパートなどの「賃貸用住宅」、販売中の物件などの「売却用住宅」、別荘などの「二次的住宅」、未使用の持ち家などの「その他の住宅」の4種類に分けられます。
空き家が全国846万戸ある中で、それぞれの内訳は以下のようになっています。
空き家の用途別割合【平成30年】
1位 賃貸用住宅 431万戸(50.9%)
2位 その他の住宅 347万戸(41.1%)
3位 二次的住宅 38万戸 (4.5%)
4位 売却用住宅 29万戸 (3.5%)
平成25年と比較すると、賃貸用住宅(0.4%増)、その他の住宅(9.1%増)、二次的住宅(7.3%増)、売却用住宅(4.5%増)となっており、全ての用途で増加しています。
特に「その他の住宅」の増加率が高いことから、誰も住んでいない持ち家が多くなっていることが推測できます。
建て方別では「共同住宅」の空き家が一番多い
最後に、空き家の建て方別のランキングを見ていきましょう。
建て方別は、マンションやアパートなどの「共同住宅」、「長屋住宅」、「一戸建て住宅」の3つに分けられています。
それぞれの戸数と割合は以下のようになっています。
空き家の建て方別割合【平成30年】
1位 共同住宅 475万戸(56.2%)
2位 一戸建て住宅 317万戸(37.5%)
3位 長屋住宅 50万戸(5.9%)
上記のデータより戸数の多い建て方に比例して、空き家の数も多くなることが分かります。
空き家が増加する原因とは?
ここまで空き家数の現状について紹介してきましたが、おおよその内容はご理解いただけたでしょうか?
空き家の数は昭和38年以降一貫して増加を続いていますが、それにはどのような原因が考えられるのでしょうか?
空き家が増え続ける原因としては、主に3つの原因が考えられます。順に解説していきます。
少子高齢化と核家族化
空き家が発生する最も大きな原因は、住宅を所有する高齢者が老人ホームや介護施設などに転居することが挙げられます。
今の日本は過去に例を見ないほどの速度で高齢化が進んでおり、総務省統計局のデータによると65歳以上の高齢者が3588万人となり総人口の28.4%を占めています。
2013年にWHO(世界保健機関)が公開している中央年齢ランキングでは、日本全体の中央年齢は45.9歳で世界183か国中1位という結果になっています。(データ参照元:http://top10.sakura.ne.jp/WHO-WHS9-88.html)
又、親世帯と子世帯が別々に暮らす”核家族”が増加していることも、空き家が増える原因になっていると考えられます。
都市部への人口集中
全国の空き家率ランキングでは都市部より地方部の方が空き家率が高くなっていることから、都市部への人口集中が地方部の空き家数を増やす原因になっていると考えられます。
地方に住んでいる両親が高齢になることで、都市部に住んでいる子供世帯と同居するという話を聞くこともあるのではないでしょうか?
最近はテレワークやオンライン会議の普及により、地方に転居する人が増えているとも言われていますが、まだまだ都市部に人口が集中しています。
地方に不動産を所有していても「売る事も貸す事もできない」という人が多く、その結果空き家のまま放置されている住宅が増えていると推測できます。
人口減少へのリスク管理
日本は少子高齢化により、将来は人口が大きく減少してしまうという大きな問題を抱えています。
平成27年版の厚生労働白書によると、日本の人口は19世紀半ば以降急増しており、明治維新時(1868年)は3000万人くらいだったのが2008年にはピークの1憶2808万人に達しました。
しかしそれ以降は減少局面に入っており、2060年には8000万人台まで人口が減少するとされています。
人口が減少することで住宅や土地に対する需要も低下すると考えられるため、空室が多い賃貸住宅もそのまま放置されたり、空き家を壊して駐車場に転用する人も少なくなっていると考えられます。
空き家の増加を防ぐための対策とは?
空き家の増加は国でも問題視されているため、あらゆる対策が議論されています。
その中で、現在されている大きな対策としては「空き家対策特別措置法」と「空き家バンク」の2つが挙げられます。
どのような対策なのか、順に解説していきます。
空き家対策特別措置法
空き家の増加に歯止めをかけるために、政府が2015年5月に「空き家対策特別措置法」という法律を新たに施行しました。
空き家対策特別措置法の大きな特徴は、「危険な空き家の解体や修繕を空き家所有者に命令できる」といった点にあります。
経年劣化で傷んだ空き家が強風などで周辺住民に危害を加えることも考えられるため、そのような空き家の所有者には行政が解体や修繕を勧告し、その勧告に一定期間従わなかった場合には強制的に空き家が解体され、その解体費用も空き家所有者に請求されるようになります。
又、危険な空き家と認められた場合には、これまでは空き家が経っていたことで受けられていた固定資産税等の優遇措置も受けられなくなります。
空き家バンク
空き家バンクは、地方公共団体が主体で運営しているマッチングサービスのことで、2018年4月からは全国版空き家・空き地バンクの運用も開始しています。
地域住民から空き家の登録を募集し、空き家を利用したい人と利用してほしい人をつないでくれる便利なサービスです。
登録料や利用料や無料で利用できるため、空き家の再利用や地域への移住定住を促進させる効果が期待されています。
空き家が増えるとどんな問題が起こる?
空き家が増えることによって、どのような問題やリスクを抱えることになるのでしょうか?
空き家問題には様々なリスクが考えられますが、大きくは以下の3つが挙げられると思います。
倒壊や火災などの危険リスク
空き家をメンテナンスもしないまま放置しておくと、建物は経年劣化でどんどん傷んでいってしまいます。
経年劣化により建物の主要構造部分(柱や梁など)が傷んでしまうことで、建物が倒壊するリスクが高くなり、万が一の場合に死傷者を出してしまうリスクを抱えることになります。
又、空き家は放火の対象になりやすいという性質も持っています。
消防庁が公表している令和元年度の火災統計によると、全国の総出火件数の37,683件のうち、放火及び放火の疑いによる出火件数は4,567件(12.1%)となっており、出火原因の1位にランクインしています。(参照元データ:総務省消防庁HP)
空き家が増加することによって、放火による火災増加のリスクを抱えることになります。
景観への悪影響
空き家が増えると、景観や衛生環境が悪化してしまう可能性が高くなります。
倒壊したり経年劣化で腐食した建物は、シロアリなどの害虫を呼び寄せるため周辺の建物にも大きな被害を与える恐れがあります。
空き家が増え、周辺の景観が悪化することによって、様々な弊害を発生させることになります。
景観悪化による弊害
- 周辺の土地や住宅の価値が下がる
- 観光地としての価値が下がり、経済的ダメージを受ける
- 地域ブランドが低下し、さらに空き家が増加する
このように、空き家増加によって景観が悪化することは、その地域に深刻なダメージを与える可能性があります。
治安悪化の問題
空き家が増加することによって治安悪化を招き、犯罪を誘発するリスクが高くなると言われています。
以下のグラフは、東京都23区の空き家率と犯罪率の相関関係を表したグラフです。
(参照元:データえっせい)
このグラフから、空き家の数と犯罪率が比例していることが分かります。
空き家を不法占拠し薬物栽培を行なったり、薬物の取引に使われたという実例があることから、空き家と犯罪の関係性は少なからずあるように思います。
まとめ
本記事では、空き家問題について解説してきました。これから人口が大幅に減少していくと言われている日本にとって、空き家問題はとても深刻な社会問題です。
又、人口が減少していくと言われているにも関わらず、日本の総住宅数は増加の一途をたどっています。
参照元:平成30年住宅・土地統計調査
人口が減っているにも関わらず住宅数が増えていってしまうと、日本全体の空き家数はさらに増えてしまうでしょう。
空き家の増加にストップをかけるために、我々住宅業界に携わる人間ができることをしっかり考え、これからの社会を創っていく必要があるように思います。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。