スムストックとは?売れない可能性はあるの?メリット・デメリットを解説。

2021年7月3日

スムストックってなに?ハウスメーカー何社が提供?スムストック住宅のメリットとは?

スムストックという言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。スムストックは「日本の中古住宅市場の変革」を目的に、住宅メーカー10社が共同で立ち上げたブランドのことです。

優良な中古住宅を長期間に渡って住み継いでいくための仕組みをつくり、住宅の資産価値を保つ効果が期待されています。

他社のサービスですがとても面白い取り組みだと思うので、今回の記事では、スムストックについて解説していきたいと思います。

スムストックとは?

スムストックとは?

それではまず、スムストックの基本的な部分について見ていきましょう。

スムストックとは、50年以上の長期点検制度・メンテナンスプログラムに基づいて計画的に点検・メンテナンスを行ない、一定以上の耐震性能、劣化基準をクリアした住宅のことです。

新築時の図面や今までの点検、修繕内容などの住宅履歴をしっかり残していくことで、中古住宅としての状態、価値を明確にすることができます。

自動車の「メンテナンスノート」を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。

スムストックが推進されるのはなぜ?

なぜスムストックが推進されているかは、日本の住宅寿命の短さ、中古住宅の流通性の低さに原因があります。

一般的な住宅でも100年以上使い続けられている欧米諸国と比べ、日本の住宅の平均寿命は約30年程と言われています。

現在主流の不動産評価制度では、建物は30年以上経過すると価値がほぼゼロになってしまうため、「30年以上経った建物は建て替える」という考えが今も浸透しています。

そのため築年数が20年以上経った中古住宅などは敬遠される傾向にあり、中古住宅の流通性が社会的な問題になっていました。

それら中古住宅の流通性を高めるために、国や民間企業があらゆる施策を考えていますが、その一つとしてスムストックが推進されています。

昨今では、SDGs(持続可能な開発目標)なども普及してきており、今後はますます住宅品質の向上や維持に対する関心が高まるでしょう。

大手ハウスメーカー10社による共同運営

スムストックを提供する「一般社団法人 優良ストック住宅推進協議会」は、大手ハウスメーカー10社が協力して設立したものです。

優良ストック住宅推進協議会の会員は、下記の10社となっています。

スムストック参画企業

  1. 住友林業
  2. セキスイハイム
  3. 積水ハウス
  4. 大和ハウス工業
  5. トヨタホーム
  6. パナソニックホームズ
  7. ヘーベルハウス
  8. ミサワホーム
  9. 三井ホーム
  10. ヤマダホームズ

これらの大手ハウスメーカー10社が、優良な既存住宅を社会の共有資産として住み継ぐための仕組みづくりのために協力しています。

参加メーカーの住宅で、共通の基準を満たすものを「スムストック」と認定することになります。

スムストック3つの特徴

スムストック住宅に認定される住宅は、優良ストック住宅推進協議会の会員である10社が提供した建物のうち、以下の条件と満たすものと定められています。

スムストック住宅販売士が査定&販売

優良ストック住宅推進協議会が定める試験や研修をクリアした、不動産と建物の知識が豊富なスムストック住宅販売士が査定・販売を行ないます。

不動産だけでなく、自社の建物に詳しいストック住宅販売士が査定・販売を行なうことで、正確な査定と不動産取引が可能になるとされています。

スムストック方式による査定

スムストックには独自の査定方式があり、その方式に沿って査定が行なわれます。

構造躯体と内装や設備などの償却年数を区別して査定することで、建物本来の価値を正しく評価するとともに、メンテナンス履歴なども査定結果に反映されます。

建物価格と土地価格に分けて表示

不動産価格は「建物価格」と「土地価格」の2つによって成り立っているため、それぞれの価格を分けて表示した方が購入者にとっては親切でしょう。

スムストックでは、一般的な総額表示ではなく、建物価格と土地価格を別々に表示し、建物自体の価値を適正に伝えられるようになっています。

スムストック住宅に認定される基準とは?

スムストック住宅に認定される住宅は、優良ストック住宅推進協議会の会員である10社が提供した建物のうち、以下の条件と満たすものと定められています。

これまでのリフォーム履歴が残っている

同じ築年数の建物でも、これまでどのような修繕を行なってきたかによって、建物の状態は大きく異なります。

これまでのリフォーム履歴を残しておくことで、建物の状態を購入者に伝えることができ、購入者に一定の安心感を与えることができます。

売却せずに住み続ける場合でも、リフォーム履歴をしっかり把握しておくことは、住宅を良好な状態に保つためのメンテナンス計画を立てるのに役立ちます。

計画通りに点検・修繕が実施されている

スムストックには、建築後50年以上の長期点検制度・メンテナンスプログラムがあります。スムストック住宅に認定されるためには、計画通りに点検・修繕を実施しておかなければいけません。

又、売却時にも査定時点検を行ない、基準を超える劣化事象がないことを確認しておく必要があります。

新耐震基準レベルの耐震性が保持されている

安心して住み続けるためには、耐震性は欠かせない要素の一つでしょう。スムストック住宅に認定されるためには、査定時に新耐震基準レベルの耐震性能があることを最低条件としています。

新耐震基準については、こちらの記事をご参照ください。

新耐震基準
新耐震基準と旧耐震基準の違いとは!新耐震基準のメリットや見分け方を解説
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スムストック住宅に認定されるメリット

スムストック住宅に認定されるメリット

スムストックの基本的な内容についてはご理解いただけたと思いますが、スムストックに認定された住宅にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

ここからは、スムストック住宅に認定されるメリットを見ていきましょう。

建物の状態をしっかり把握できる

スムストック住宅に認定されるためには、新築時の図面、点検内容やリフォーム履歴など、建物に関するデータを保有しておく必要があります。

これらのデータは、マイホームを売却するときにとても役に立ちます。中古住宅の売買の大半は、不動産会社が作成する販売資料のみで行われますが、それだけだと購入者は建物に対する不安が拭い切れません。

中古住宅に対する評価資料が多いということは、それだけで他物件と差別化を図ることが可能になります。

次の所有者に建物保証を引き継げる

新築住宅を購入する場合、ハウスメーカーが定める期間(10年以上)の建物保証が付きます。

この建物保証は、新築時の購入者のみが対象となるため、保証期間中に不動産を売却しても、次の所有者に保証を引き継ぐことができないのが一般的です。

スムストック住宅に認定された建物では、次の所有者に保証を引き継ぐことができるため、購入者も安心して建物を購入することができます。

建物の適正価格が分かる

一般的な中古住宅では、建物の価格は構造(木造・鉄骨造など)と築年数によって算出されることがほとんどです。

建物の状態が価格に反映されることはほとんどありませんが、スムストックでは建物と土地の価格を別々に表示されるため、適正な建物価格を把握することができます。

スムストックのデメリット

スムストックのメリットについて解説しましたが、「デメリットについても知りたい」という方に向けて、考えられるデメリットについても簡単にご紹介しておきます。

定期的なメンテナンスが必須になる

先述したとおり、スムストックに認定されるためには計画通りに点検や修繕が実施されている必要があります。一般的な住宅の場合は、点検や修繕の実施は住宅オーナーの判断に委ねられていますが、スムストックの場合は定期的な点検が求められ、修繕が必要な場合は別途修繕費用がかかります。

住宅の品質を保つために定期的なメンテナンスは必要ですが、自分の判断で決められないという点においてはデメリットといえるかもしれません。

高く売却できるとは限らない

スムストックに認定されるためには大手ハウスメーカーで住宅を建築する必要があるため、建売住宅と比べて建築費が高いことに加えてメンテナンス費用であるため、住宅にかかる総額が高めになります。

住宅オーナーからすると「多くお金を支払ってるんだからその分高く売れるだろう…」と思ってしまいがちですが、売却のタイミングや地域によっては売却時の価格に反映されにくい場合もあります。

冒頭でお伝えしたとおり、日本の中古住宅市場はいまだ未成熟で「新築住宅を買う予算がないから中古住宅を買う」という人が多い傾向にあります。同地域内で新築住宅が販売されている場合、新築住宅の価格に影響を受けるため、希望価格で売れない可能性が高くなってしまいます。

まとめ

以上、スムストックについてお伝えしました。最後に本記事のまとめを書いておきましょう。

本記事まとめ

  • スムストックは日本の住宅寿命を延ばすのに期待されている。
  • 大手ハウスメーカー10社による共同運営。
  • 建物の状態が分かるメンテナンスノートのようなもの。
  • 書類の保管や建物保証の引継ぎは売却時に役立つ。
  • スムストックだからといって高く売れるとは限らない。

今の日本の住宅業界は住宅寿命のほかにも、少子高齢化による空き家増加など様々な問題を抱えています。

どれだけ住宅の状態が良かったとしても、住む人がいない場所では、住宅としての価値はゼロに等しくなってしまうでしょう。

これからは単純に建物を建てるだけでなく、建物の状態を保持するとともに、資産として残る家づくりを心がけていく必要があります。

そのためには住宅会社のみならず、まちづくりや国全体の政策が重要になってくるのかもしれません。