公道と私道の違いとは?不動産価値に大きく影響する「道路の種類・特徴」を解説

2021年6月13日

公道と私道の違いとは?不動産価値に大きく影響する「道路の種類・特徴」を解説

日常生活の中で、公道と私道の違いや道路の種類についてあまり気にすることはないと思います。しかし、実はこれらのことは不動産の価値に大きな影響を与える重要な要素です。

同じ地域に全く同じ大きさの土地があったとしても、どのような道路に面しているかでその土地の価値は全く異なります。この記事では、道路が不動産価値に与える影響や道路の種類について説明していきます。

道路が不動産に与える影響とは?

道路が不動産に与える影響とは?

道路の種類や特徴を知る前に、道路が不動産に与える影響について理解しておきましょう。

マンションを取引する場合にはあまり関係のないことですが、土地や戸建てを取引する場合にはとても重要なことです。

初めて土地や戸建てを購入する場合、土地や建物のことばかり考えてしまい、道路のことは見逃してしまいがちなので注意しましょう。

建物を新築できるかに影響する

土地に面しているか道路によっては、建物を新築できない場合があります。

道路が原因で新築できない場合

  • 面している道路が「建築基準法上の道路ではない」場合
  • 道路所有者の承諾が得られず、掘削工事ができない場合

このような場合、建物を新築できない可能性があるので注意しましょう。前面道路が「他人地」の場合は特に注意が必要です。

当然のことですが、他人のモノを勝手に工事する訳にはいきません。道路を工事するためには、道路所有者全員の承諾が必要になります。

道路所有者が複数人の場合も多いので、事前に「道路所有者が誰なのか」をチェックしておくことが重要です。

建てられる建物の大きさに影響する

現在の建築基準法では「道路幅員は4m以上を確保する」という決まりがあります。

4m以上を確保できない場合は、土地の一部を道路として利用しなければいけません。いわゆる「セットバック」といわれるものです。

セットバックをすると、土地の有効面積が小さくなってしまうので、その分新築できる建物面積も小さくなってしまいます。

セットバックは「道路中心線から2m後退する」のが原則ですが、向かい側が水路の場合などはさらに後退が必要になります。

外見では道路のどこが中心かの判断もできないので、前面道路が4m未満の土地を取引する場合は事前に専門家に調べてもらいましょう。

又、道路斜線制限と言われる高さ制限なども関係してくるため、道路幅員が狭いと3階建て住宅を建てられないケースもあります。

新築時の手間や費用に影響する

道路の種類によっては、新築時の手間や費用に大きく影響を与えます。

道路幅員が狭い場合などは、土地の前に工事車両が入ることができないため、資材を運ぶのに手間がかかってしまい、新築費用が高くなってしまいます。

土地所有者から掘削同意をもらう場合も同じことがいえます。所有者全員から掘削同意をもらう必要があるため、所有者が多いとその分手間がかかります。

近隣に住んでいる場合は比較的簡単ですが、所有者が遠方に住んでいる場合は会うだけでも一苦労です。私道によって掘削同意が必要になる対象も違うため、事前に調査しておくことが大切です。

公道と私道の違い

公道と私道の違い

道路の種類には色々とありますが、大きく分けると「公道」と「私道」に分けられます。

一般的にはどちらも道路と呼ばれていますし、外見で公道か私道かを判断することはできません。

しかし公道と私道かは、法的にしっかり区別されていてそれぞれに違いがあります。

管理者が違う

公道の管理は「国」や「地方公共団体」がするようになっていて、国道であれば国ですし、市道であれば市が管理をします。

公道の管理は税金で賄われており、道路の舗装工事や上下水道などの埋設管の保守管理なども、国や地方公共団体が行ってくれます。

それに対し、私道の管理や「道路の所有者」が行うため、舗装工事や埋設管の保守管理の費用も道路所有者が負担することになります。

私道であっても、上下水道の埋設管は公営のモノが利用されている場合があり、その場合は行政によって管理されています。

通行制限がされている場合がある

公道の場合は国民や市民の道路のため、自由に通行することができますが、私道の場合は、基本的にはその道路の所有者の許可を得なければ通行することができません。

ただし、建築基準法上の道路として認定され、法律上「道路」として指定されている場合は自由に通行することができるとされています。

道路として認定されると「固定資産税などを非課税にしてあげるので、誰でも通行できるようにしてください」ということになりますが、街中では「私道につき通行不可」という看板を見かけることもあります。

道路として指定されていても、道路の保守管理は道路所有者が行なう必要があるため、「なるべく道路の状態を悪くしたくない!」と考える道路所有者も少なくありません。

通行不可の看板が法的に有効性は道路によって違うと思いますが、私道を通る場合は所有者に対する心配りをしておいた方が良いといえるでしょう。

掘削工事の承諾者が違う

新築工事や改装工事で、前面道路から上下水道管やガス管を引き直さなければいけない場面があります。その場合は道路の所有者・管理者に、掘削工事をすることを承諾してもらわないといけません。

公道の場合は、市町村役場の道路管理課(市町村によって名称は異なる)に申請して承諾をもらうことになりますが、私道の場合は、道路所有者に直接承諾をもらうことになります。

道路所有者が道路管理会社などの場合、承諾する際に「承諾料」を請求してくる場合もあるので事前に調べておきましょう。

道路の種類と特徴

道路の種類と特徴

先ほど紹介した「公道」と「私道」は、あくまで所有者別に道路を分類した場合です。

実際に不動産取引をする場合は、法律上の分類も理解しておく必要があります。土地に面する道路の種類によっては、最悪建て替えができない場合もあるので注意しましょう。

建築基準法上の道路(建築基準法第42条)

建築基準法で道路として認定されている道路を「建築基準法上の道路」といい、建築基準法第42条で規定されています。

第42条道路の中でもいくつかに分けられているので、順に見ていきましょう。

42条1項1号道路

道路法の道路をことをいいます。国道や市道のことで、幅員4m以上のものをいいます。

42条1項2号道路

都市計画法や土地区画整理法などに基づき許認可を受けて作られた道路で、幅員4m以上のものをいいます。

工事開始時は42条1項2号であっても、工事完了後に市町村に移管される場合が多く、その場合は上記の42条1項1号道路となります。

42条1項3号道路

建築基準法が施工された昭和25年11月23日もしくは都市計画区域に指定された時のいずれか遅い時点で幅員4m以上の道路として存在していた道路のことをいいます。

42条1項4号道路

道路法、都市計画などの法律による新設又は変更の事業計画のある道路のことです。

事業の申請に基づき2年以内に事業が執行される予定のものですが、通常の不動産取引ではほとんど目にすることはないと思います。

42条1項5号道路

土地所有者がつくる幅員4m以上の道路のことで、分譲地を開発する開発事業で築造されることが多い道路です。

事業申請を受けて特定行政庁が位置を指定することから「位置指定道路」とも呼ばれています。

42条2項道路

建築基準法が施工された昭和25年11月23日もしくは都市計画区域に指定された時のいずれか遅い時点で幅員4m未満の道路のことです。

すでに建築物が立ち並んでいるエリアなどに多く、この道路に面している土地は、建て替え時に境界後退(セットバック)が必要になるので注意が必要です。

建築基準法上の道路でない道路(建築基準法第43条)

これまでは建築基準法第42条に規定されている、建築基準法上の道路について説明してきました。

現在の法律では、建築基準法上の道路に2m以上面していない土地は再建築ができないと規定されています。

しかし日本国内には上記の道路に面していない土地も多いため、土地の有効活用や資産性確保の観点から、一定の条件を満たす場合は例外的に建築ができるとされています。

43条但し書き道路

土地周辺に「空地」や「通路」があるなど一定の条件をクリアし、建築審査会の同意を得られた土地のことです。

名称の中に「道路」が含まれていますが、43条ただし書き道路は道路ではありません。法律上の道路ではなく、あくまで「道路として利用する空地」のことをいいます。

43条ただし書き道路の申請をするためには、土地所有者全員の同意が必要になるので事前に同意書を集めておく必要があります。

又申請したからといって全ての土地で認定されるわけではないので、事前に調査をしておくことが大切です。

43条ただし書き道路については別の記事で詳しく解説していますので、そちらの記事も併せてご覧ください。

43条但し書き道路
建築基準法43条但し書き道路とは?将来的に再建築ができないリスクがあることを知っておこう

続きを見る

最後に

本記事では道路の種類について説明してきました。冒頭でもお伝えしたように、土地や戸建てを取引する場合、道路の種類はとても重要な要素です。

前面道路の状態によって不動産価値にも大きな影響を与えるため、必ず事前に調べておきましょう。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

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