不動産の売買契約を締結し、住宅ローンの手続きや引き渡しの準備を終えると、ようやく不動産の決済を迎えることになります。
決済当日に必要な書類に不備があると、手続きをスムーズに進めることができず、トラブルに発展してしまう可能性もあります。
決済日を迎える前に、しっかりと知識を身に付けておきましょう。
本記事では、決済に必要な書類や決済当日の流れについて解説していきます。
目次
不動産決済とは?
不動産取引に慣れていないと「不動産決済って何をするの?」と疑問に思うかもしれません。
決済当日は、同席する司法書士や不動産業者がサポートしてくれるとはいえ、自分でしっかり予備知識を身に付けておいた方が、安心して決済を迎えることができます。
決済当日に行なうことは、大きく分けて3つありますので順に説明していきます。不動産の決済ではどのようなことをするのか、しっかり理解しておきましょう。
売買代金の授受を行う
決済当日でまず行なうことは、買主から売主に売買代金を支払うことです。
売買契約時に支払っている手付金を引いた金額に、固定資産税などの税金と、マンションの場合は管理費や修繕積立金の清算金を加えた金額を売主に支払います。
取引によっては、着工金や中間金などを支払っている場合もありますので、それらの金額を差し引いた金額を売主に支払うことになります。
不動産の引き渡す
買主から売買代金を受け取った売主は、取引の対象となる不動産を引き渡します。
引き渡すといっても不動産を持ち運ぶことはできないため、家の鍵や書類の受け渡しにより引き渡しを行なうことになります。
諸費用を支払う
不動産会社の仲介手数料や、司法書士の登記費用など、不動産取引に必要な諸費用を支払います。
住宅ローンを利用する場合は、金融機関に支払う諸費用が差し引かれて指定口座に入金されることになります。
取引によって必要な諸費用の項目は大きく異なるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
決済当日には、基本的に上記の3つのことを行なっていくことになります。
この事を理解しておくだけで「今はこれをしているんだな!」と、自分がしている作業の意味が分かりやすくなるはずです。
それでは、実際に決済当日はどのような流れで進んでいくのか見ていきましょう。
決済(引き渡し)当日の流れ
不動産の決済は、売買契約を締結してから約1カ月ほどで行なうのが一般的ですが、居住中物件や売り建て住宅などの場合は半年~1年後に行なうこともあります。
決済を行なう場所は、買主が住宅ローンを利用するかどうかで変わります。
買主が住宅ローンを利用する場合は、借り入れをする金融機関の店舗で決済を行ない、住宅ローンを利用しない場合は、売主と買主双方にとって都合の良い金融機関の店舗か、不動産業者の事務所で行ないます。
銀行窓口の営業時間の兼ね合いから、一般的には午前中に行なわれることが多いですが、買主売主の都合によって午後から行なわれることもあります。
多くの場合は約1時間ほどで終了しますが、月末など銀行の業務が忙しい場合は2時間以上かかる場合もあります。
その時間の内にどのようなことをするのか、おおまかな流れを順に解説していきます。
本人確認・書類確認
まず決済当日に行なうのが、売主と買主が本人であるかの確認を行ないます。
同時に決済に必要な書類に不備がないかの確認も行ない、きちんと決済ができる状態にあるかを確認します。
本人確認は免許証で行なうことが多いですが、免許証を持っていない場合は住民票などの書類が必要になります。
登記関係書類の作成
不動産決済を行なうと、所有権移転登記や抵当権の抹消・設定登記などを手続きを行なう必要があります。
抵当権の抹消登記は売主が住宅ローンを利用している場合に、抵当権の設定登記は買主が住宅ローンを利用する場合に行ないます。
所有権移転登記や抵当権設定登記は司法書士に委任することになるため、司法書士に業務を委任するための書類を作成します。
買主が住宅ローンを実行
本人確認と書類の準備が完了したら、住宅ローンの融資実行を行ない、金融機関から買主の銀行口座に入金されます。
その際、金融機関に支払う事務手数料や保証料などは差し引かれて入金されることになります。
残代金・税金の精算
買主の銀行口座から必要な金額を出金し、売主に残代金と税金の清算金などを支払います。
税金は1月1日時点の所有者がその年度の固定資産税・都市計画税を納める義務があるため、年度の途中で所有者が変わった場合は当事者間で清算を行なう必要があります。
取引物件がマンションの場合は、管理費や修繕積立金の清算も同時に行ないます。
売主側の抵当権抹消手続き
売主の住宅ローンに残債があると、取引物件には抵当権が設定されています。
抵当権が設定されている状態で引き渡しを行なうわけにはいかないため、残代金の支払いを確認した時点で抵当権抹消手続きを行ないます。
抵当権抹消の手続きは、売主が住宅ローンを借り入れている金融機関が担当します。
物件の引き渡し
残代金や税金などの支払いが完了すると、売主から買主に物件の引き渡しがされます。
物件によって異なりますが、鍵や管理規約、パンフレットなどを売主から買主に引き継ぎます。
各業者に代金の支払い
不動産業者に支払う仲介手数料、司法書士に支払う登記費用、火災保険料などを支払います。
業者によって現金受領か口座振込か異なるため、各業者指定の方法で支払いを行なうことになります。
所有権移転登記・抵当権設定
金銭の支払いと物件の引き渡しが完了すると、司法書士が法務局にて所有権移転登記、抵当権設定登記などの登記手続きを行ないます。
所有権移転登記が完了するには1週間~2週間の期間が必要となり、無事登記が完了すると登記完了書類が交付されます。
交付される「登記識別情報」は、不動産の権利関係を証明する書類なので大切に保管しておきましょう。
以上が決済当日の流れとなります。
文章で読むと少し難しく感じるかもしれませんが、当日は同席する不動産会社や司法書士がしっかりサポートしてくれるはずです。
実際には作業自体はすぐに終わり、ほとんどが金融機関の出金や振込処理を待つ時間になるケースが多くなります。
決済当日に必要な書類
決済当日は不動産業者や司法書士、金融機関の担当者など多くの関係者が集まります。
当事者である売主、買主いずれかが忘れ物をしてしまった場合、その日のうちに決済ができなくなるため、集まった関係者に大きな迷惑をかけることになります。
取引相手にも迷惑をかけてしまうため、かなり気まずい雰囲気になってしまいます。そうならないように、決済当日に必要な書類などをしっかり把握しておきましょう。
売主側が用意する書類
不動産の売却をするにあたって必要な書類は、下記のカテゴリーに分けられます。
- 売主に関する書類
- 不動産に関する書類
- 権利に関する書類
- 支払いに関する書類
これらの書類として、実際必要となる書類は以下のようになっています。
売主の必要書類
- 権利証(登記済証もしくは登記識別情報)
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 実印
- 固定資産税評価証明書(もしくは公課証明書)
- 顔写真付きの身分証
- 買主に引き渡す書類(鍵やパンフレット、管理規約など)
- 着金を確認できるもの(通帳・キャッシュカード・オンライン端末など)
- 各業者に支払うための現金(買主からの残代金で支払う場合は不要)
- 抵当権抹消書類(抵当権が設定されている場合のみ)
- 前住所が分かる住民票(登記されている住所と現住所が違う場合のみ)
基本的に上記の書類が必要となりますが、取引内容によっては別の書類が必要になる場合もあるので、必ず不動産業者や司法書士に確認するようにしましょう。
抵当権抹消書類は、取引する不動産に抵当権が設定されている場合に必要です。
抵当権を設定している金融機関に準備してもらいますが、抵当権抹消書類の準備ができるまでには2週間ほど日数が必要となります。
決済日が分かった時点で、必ず金融機関に連絡しておきましょう。
買主側が用意する書類
買主が用意する書類は、主に下記のカテゴリーに分けられます。
- 買主に関する書類
- 支払いに関する書類
売主と比べて用意する書類は少なくなり、実際に用意する書類は以下のものです。
買主の必要書類
- 金融機関への届印
- 預金通帳(ない場合はキャッシュカード)
- 顔写真付きの身分証
- 現金(必要な場合のみ)
- 実印(必要な場合のみ)
- 住民票(必要な場合のみ)
- 印鑑証明書(必要な場合のみ)
決済当日に入金される住宅ローンの金額よりも、売主や各業者に支払う金額の方が多い場合は、事前に口座に入金しておくか、現金で決済当日に持ってくる必要があります。
住民票や印鑑証明書は登記に必要になりますが、事前に金融機関に渡していることも多く、その場合は決済当日に持ってくる必要はありません。
まとめ
決済当日の流れと必要書類について説明してきました。必要な書類に一つでも不備があると、その日のうちに決済ができなくなることもあります。
特に抵当権抹消書類などのように「準備までに時間がかかる書類」に不備があった場合は、引き渡し期日までに決済ができなくなり、契約違反になってしまう可能性も出てきます。
気持ち良く不動産取引を完了するためにも、事前にしっかりと準備をしておくようにしましょう。